「本が出版された当時はよく理解できなかった提言なども、時間が経ってから読むと、『こういうことを言っていたのか』と腑に落ちることがあります」と木村さんは言う。
「当然ながら、平成は昭和天皇の崩御から始まりました。そのとき天皇制についてもっと真剣に考えなければいけなかったのだと、多くの人が思っているのではないでしょうか。当時から長尾龍一は『リヴァイアサン』で、天皇の人権回復という点からも退位を認めるべきだと述べています。奥平康弘『萬世一系の研究』も同様。反省をこめて読み返したいテーマです」
1990年代後半は、オウム真理教をめぐる本も多く出版されたが、その中で木村さんが薦めるのは、大澤真幸『虚構の時代の果て』。
「どういう社会背景からオウム真理教のような思想が生まれたのかがわかります」。〈現実〉と対になる反対語はかつて〈理想〉だったが、この時代には〈虚構〉になったと指摘。虚構世界を構築するために終末論が用いられたというのだ。
’90年代、オカルト的なものに惹かれていく気分がたしかにあったということを思い出させてくれるのが、と学会『トンデモ本の世界』。
「これは意外と大切な本なんですよ。ノストラダムスが人類滅亡を予言した’99年が迫っていたこともあってか、この年代にはわりとダイナミックなトンデモが登場したように思います。トンデモ本を知っておくのは、騙されないために大切なこと。インターネットにもっともらしく書かれていたり、有名な出版社から本が出ているからといって鵜呑みにするのは危険です。いかにも権威のありそうな経歴を持つ人がトンデモ説を提唱していたりするのです」
2001年にはアメリカ同時多発テロ事件が世界に衝撃を与えた。
「これ以降、大国間の戦争ではなく地域紛争やテロが人々のリアルな脅威になりました。『平和のリアリズム』には、9.11を受けて藤原帰一が考えたことが書かれていますが、今読んでも、国際政治についての考え方を学ぶことができる本です」