冬から春、格別においしくなる沖縄の野菜。命の薬とも呼ばれる、旬の島野菜を食す旅。
撮影:大城 亘 文:川口美保
伝統と自然に出合い、沖縄の力に触れる場所へ。
生きるための「ぬちぐすい(命の薬)」は、食に限らない。沖縄が大切にしてきたものに、生きる力をもらう春の旅。
沖縄を旅すると自然と力が湧いてくる。慌ただしい日常から離れ、ゆったりと流れる時間に気持ちが解放されるのはもちろんだが、沖縄を旅することは、人間が生きる原点に立ち戻るような、あらためて何を本当に大切にすべきか、もう一度体の奥から思い起こさせるような、そんな体験に繋がる気がする。
旅をしていると、至るところで、沖縄の人々が自然の力を信じ、風習や伝統を大切にする心が暮らしの中に息づいている場面に出合い、不思議な懐かしさを覚えるだろう。人間の力が及ばない大自然の中に身を置くとき、畏敬の念に心震えることだろう。そういうことが明日のための大切な力となる。
春の沖縄を旅しよう。きっと、これからの人生に響く、いい旅となる。
【壺屋やちむん通り】伝統をいまに繋げる壺屋焼。その心が生きる器に出合う。
沖縄には「やちむん」と呼ばれる焼き物の文化がある。なかでも300年近い「壺屋焼」の伝統への思いを受け取ることができるのが、窯元や店舗が立ち並ぶ「壺屋やちむん通り」。伝統的な古典柄の力強い作品だけでなく、若い職人たちによるみずみずしい作品もあり、伝統をいまに繋げる職人たちの粋を感じることができる。なかでも『育陶園』の唐草模様の器は、古くから伝わる柄でありながら洗練された形と色使いが魅力。昔ながらの沖縄の風景を大切に残した小径も多く、壺屋をゆっくりと散策しながら食卓を彩る器を探したい。
壺屋やちむん通り●沖縄県那覇市壺屋1-21-14
【首里金城町石畳道】古都・首里の城下町を歩きながら、琉球の風を感じる。
首里の町は、琉球の都をつくってきた地形や風土を大切にし、石畳や石段、井戸やなどが、数多く残っている。なかでも、琉球石灰岩が敷きつめられた石畳と、沖縄戦の戦火をまぬがれた石畳道の両側にある屋敷囲いの石垣が美しい「金城町の石畳道」は、沖縄の名歌「芭蕉布」にも歌われているほど。
さらに石畳道から奥に入ると樹齢200年以上の大アカギ群があり、根元の祠には旧暦6月15日に神様が降りてきて願い事を聞き上げていくと伝えられている。琉球の風を感じながら、自分の未来を思いめぐらすのもいい。
首里金城町石畳道●沖縄県那覇市首里金城町2-35
【備瀬のリゾートコテージ】備瀬のフクギ並木の中に佇む 大人の隠れ家で深呼吸。
「美ら海水族館」から15分ほど歩くと、心から癒やされる風景が現れる。それが樹齢300年ともいわれる備瀬フクギ並木の風景だ。集落には昔ながらの赤瓦の家が多数残り、奥には海が見え、差し込む日差しやゆったりと流れる時間に、過去にタイムスリップしたような気分が味わえる。
この集落、静けさに包まれ、月夜に照らされる夜の時間帯がまたいい。フクギ並木の中に点在するコテージ「フクギテラス」「とくあさぎ」「ルルマ」の宿泊では、流れる時間こそが贅沢そのもの。
フクギテラス●沖縄県国頭郡本部町備瀬458 TEL:0980-48-2911 本館、別館ともに問い合わせ先は同じ。HPからも予約できる。
【久米島】東洋きっての透明度を誇る、楽園の島で心癒やされる。
沖縄本島の西に位置する久米島。1983年に島全体が県立自然公園に指定されており、その美しさは別格。全長約7キロに及ぶ真っ白な砂浜だけの島「ハテの浜」は、まさしく「楽園」と呼ぶにふさわしく、エメラルドグリーンの海に360度囲まれたとき、その神秘的な風景に心身が浄化されていく感覚を味わえる。また、色とりどりの熱帯魚やサンゴの世界も堪能したい。
海で楽しんだ後は、久米島に残る昔ながらの集落や史跡、建造物などを散策し、人々の素朴であたたかな暮らしに触れるのもいい。
【西表島】ダイナミックな大自然の力を全身で浴びる旅。
マングローブの森をカヌーで進み、森の中をトレッキングすると、東洋のガラパゴスとも呼ばれる西表島の珍しい生物や植物と出合うことができる。原始の大自然が生きる西表島を訪れると、手つかずの自然とはこれほどパワーに溢れているのかと圧倒される。
なかでも「日本の滝百選」にも選ばれ、3段になって流れる美しさが特徴的なマリユドゥの滝は必見。ほかにも落差55メートルの沖縄県最大のピナイサーラの滝つぼまで向かうツアーもおすすめだ。自然にすっぽりと抱かれる体験は、人生の忘れがたい思い出となる。
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協力・沖縄県、沖縄観光コンベンションビューロー
『クロワッサン』968号より