“朝”と“夕方”のしごとでめりはりのある時間使い【朝編】
撮影・雨宮秀也 文・後藤真子
朝は掃除、洗濯、夕飯の下ごしらえ。そして必ず花を飾る。
日々の暮らしの中にさりげなく、身近な草花を飾るーー。そんな花の教室「日々花」を主宰し、草花の生け方や楽しみ方を提案している、雨宮ゆかさん。夫の秀也さんは写真家で、二人とも事務所は自宅に置いている。
家で共に過ごす時間の多い二人は、結婚して20年。5年前に建てたというこの家は、秀也さんと仕事でつき合いの深い、建築家の中村好文さんが設計したもので、木の肌触りが優しく、室内はいつもすっきりと片づいている。
家の前庭には、四季折々の草花や庭木の茂る花壇、敷地の一角にはハーブガーデンが設けられている。家の裏側の一段高くなっている土地には畑があり、家庭菜園を営んで、日々、季節の野菜を収穫している。
二人とも不規則な仕事で忙しい中、どのような時間配分、作業分担で家事をこなしているのか。
ゆかさんは仕事柄、月に5〜6回は朝5時に起き、秀也さんの運転する車で、早朝に開かれる花の市場に出かける。ほかの日はさすがにそこまで早起きではないが、「朝の時間を大切にしています」と話す。
朝起きて、まず二人で取りかかるのは、朝食作り。「どちらが何をやると決めているわけではないんです」と、秀也さん。その日ごと、なんとなく、の役割分担で、しかし阿吽の呼吸で作業が進む。今日はホットサンドにしようかとなれば、ゆかさんが自家製ハムやチーズを切る傍らで、秀也さんがコーヒー豆を缶から出し、ミルで挽き、直火式のエスプレッソメーカーにセットする。気がつくと、ホットサンドメーカーとエスプレッソメーカーが並んでガスコンロにかかっている。
「コーヒーのほか、朝はさっぱりするのでシークヮーサージュースを飲むのが定番です。暑い季節以外は、濃縮果汁をお湯で割って、ホットにすることが多いですね」と、ゆかさん。
後で落ち着いて過ごせるよう、夕食の準備は朝のうちに。
食べ終わったら、後片づけをするついでに、夕食の下ごしらえをしてしまうのが、ゆかさんのスタイル。この日はきゅうりを切って塩もみし、煮立てた酢をかけてピクルスに。また、鶏肉にレモンソルトとタイムで下味をつけ、冷蔵庫に。
「夕食の献立を、がっちり決めてしまうのではなく、どうとでもできるように幅をもたせて下ごしらえをします。鶏肉はここまでやっておけば、翌日焼いてもいいですし」(ゆかさん)
夕食は、その日に自家菜園でとれた野菜によっても変わる。仕事の状況によって外食することもある。そのため、きゅうりのピクルスも、後でほかの野菜と合わせてドレッシングをかけたりできるよう、酢と塩だけのプレーンな味つけだ。
あらかじめ先の予定を決めすぎないこと、それが雨宮さん夫妻の、暮らしにゆとりを生んでいく秘訣であるように感じられる。
といっても、行き当たりばったりということではない。むしろその対極で、どう転んでも後で落ち着いて過ごせるよう、できる準備は朝のうちに済ませておく。だからこそ、「朝のしごと」を大切にしているのだろう。
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