【俳優・広瀬すずさんに聞いた】揺さぶられて、ちゃんと迷って。わからなさを味わい尽くす──NODA・MAP『華氏マイナス320°』
撮影・網中健太 文・長嶺葉月
初舞台となった『Q:A Night At The Kabuki』(2019年初演、2022年再演)を経て、NODA・MAPへの参加は今回で3度目。広瀬すずさんが、4年ぶりの舞台に再び立つ。
「初舞台を終えたとき、心に残ったのは“舞台が好き”という気持ちでした。またあの場所に立てるのなら、という思いが強かったし、野田(秀樹)さんの作品をお断りする理由は正直見当たらない。前作では、野田さんから舞台での立ち方や歩き方、声の出し方に至るまで、細やかにご指導いただきました。稽古というより、身体の機能や感覚をひとつずつ呼び起こしていくような時間。映像作品よりもはるかに肉体的で、まず体温を上げるところから始まるような感覚があったんです。体が開いていくと、不思議と感情の立ち上がり方も変わってくる。あのエネルギーの放ち方は舞台ならではのもの」
本作は、誰もが他人事ではいられない“命”を真正面から扱う物語。
「命というテーマについては、共感というより、納得してしまう瞬間がありました。自分の感性とは少し違うのに、読んでいくうちに『そりゃそうだよね』と受け入れてしまう。生きていく中で避けられないテーマが、嘘なく描かれている。きれいごとでもなく、正解も提示しない。だからこそ、どこかで自分の価値観に引っかかるんです」
野田さんが紡ぐ台詞は、軽やかな言葉遊びの奥に、鋭い真意が潜む。
「文字だけを見るとポップで軽快なのに、油断していると急に胸の奥をギュッと掴まれ、体にギトギトしたものがこびりつくような(笑)。その振れ幅に身を委ねたいです」
舞台では映像のように細かなニュアンスを拾ってもらうことはできない。届かなければ、何も残らない。
「舞台はストレートに届けなければ伝わらない。特に、野田さんのセリフは、身体と切り離せない言葉ばかりで、頭で理解するだけでは足りなくて、体温が乗っていないと成立しない。いまはまだ、掴みきれていない部分も多いけれど、その“わからなさ”も含めて楽しみたいです」
観る人には自由に受け取ってほしい、という。
「私は希望のある物語だと思いました。人が生き抜こうとする強さやしぶとさを感じられる。きっと、それぞれの人がそれぞれの答えを持ち帰るはず。その違いこそが、この舞台の意味になるのかなって。3度目の挑戦になりますが、だからこそわかったつもりになりたくない。毎回ちゃんと揺さぶられて、ちゃんと迷いながら、この時間を共有できたらと思っています」
NODA・MAP 第28回公演『華氏マイナス320°』
NODA・MAPによる最新作。舞台は、とある化石の発掘現場からはじまる。発掘チームが追い求めるのは、ただ一つ、「謎の骨」。その正体をめぐって、物語は現代から中世、そして古代へと時空を超えて広がっていく。
4月10日(金)より東京芸術劇場 プレイハウスを皮切りに、北九州、ロンドン、大阪で上演。
『クロワッサン』1162号より
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