【俳優・森田望智さんに聞いた】偽りの関係から生まれる本当の心と優しさ──映画『レンタル・ファミリー』
撮影・五十嵐一晴 スタイリング・黒崎 彩(Linx) ヘア&メイク・渋沢知美(beautycollection) 文・兵藤育子
誰かの代役を務める「レンタル家族」。本作は一見奇妙な仕事を介した心のつながりを描く、感動のドラマだ。『ザ・ホエール』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーさんが主演を務め、全編日本ロケを敢行。森田望智さんは、序盤の重要な役を演じている。
「HIKARI監督とご一緒したくて、オーディションを受けました。監督の『37セカンズ』という作品は自然と物語の中に入りやすく、キャラクターの佇まいは、まるでドキュメンタリーを観ているよう。嘘のない表現で、お芝居を超えた何かを目指されている気がしたのです」
森田さん演じる佳恵は、とある理由でレンタル家族を依頼。そして東京で暮らす、落ちぶれたアメリカ人俳優のフィリップが彼女の新郎に扮して、大々的に結婚式を行うことに。
「ブレンダンさんの演技は、全部アドリブなのではと思うほど。物語の行き着く先がわかっている中で、その瞬間をどう生きるかが、俳優にとっての難しさだと思うのですが、ブレンダンさんは同じセリフでも言い方やニュアンスが毎回変わるんです。その変化に導かれてこちらも演じている意識が薄れるほど、自然と芝居の中に引き込まれていきます」
その後もフィリップはレンタル・ファミリー社の一員として、父親の顔を知らない少女と親子になって入学試験の面接に臨んだり、記者のふりをして大物俳優に架空のインタビューを行ったり。戸惑いを覚えつつ、他人の人生に入り込んで求められることに、充足感を抱くように。
「年齢や職業など、つい型にはめがちな境界線は明確なものではないのだと感じました。血のつながりや一緒にいる時間は関係なく、そこに愛情があれば家族と呼べる関係が生まれる。それが人と人の本来のあり方なのだと教えていただきました」
一方、役者のフィリップが、身分を偽って信頼を得ることに苦悩する心情について、こんなふうに語る。
「役者は現実そのものを生きているわけではありませんが、本当に気持ちが伴わなければ、役として生きることはできないと思っています。私が日々大事にしているのは、いかに嘘をなくしていくかということです。フィリップの人生が増えていくような感覚には、同じ役者として強く心を動かされました」
森田さんも作品によって多彩な面を見せてくれる役者だが、ひとことで説明できない役柄に惹かれるそう。
「感情ひとつとっても、わかりやすくないものに惹かれることが多いです。どっちの意味なんだろうと考える時間が好きで、難しさがあるほど自然と楽しさを感じてしまいます」
『レンタル・ファミリー』
監督はアメリカを拠点に活躍し、映画界で注目を集めている日本人のHIKARI。東京で暮らす孤独なアメリカ人が、“レンタル家族”を通して築く関係性を、日本の美しい風景とともに描く。
出演:ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明
2月27日(金)より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。
『クロワッサン』1159号より
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