『殺し屋がレジにいる』榎田ユウリ 著──レジで出会ったのは72歳の殺し屋女性
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
昨年、いちばん「わかるわかる」とうなずいた小説がこれ。いやあ、身につまされた。といっても、殺し屋の話なんですけど。
榊冴子、52歳。問題のあった夫と離婚して現在一人で暮らし、スーパーで働いている。勤務先では店長や客に見くびられ、父や兄からは“母に認知症の兆しがみられる問題”を押し付けられている。
そんな彼女がスーパーのレジ担当中に目撃したのは、迷惑男性客に毅然と立ち向かう黄色いジャージを着た老婦人。毒舌な上に身体能力も抜群な彼女、名は山田グロリア、実は72歳にして凄腕の殺し屋だ。彼女が老人ホームを隠れ蓑として仲間と暮らしていると知った冴子は、モラハラ夫に軟禁されている親友を助けるために、グロリアに「強くなりたい」とトレーナー役を申し込む。が、グロリアの態度は冷たい。
メンター的な存在に無理やり鍛えさせられるのでなく、冴子が自ら強くなりたいと願って変わっていく姿が痛快。50代の女性の筋トレ法もリアルで笑った。しかし人殺しになりたいわけではない冴子は、どのように親友を救うのか。
「自分さえ我慢すれば丸く収まる」と考えがちな人に、「NO」と言えるパワーをくれる小説。好き!
『クロワッサン』1159号より
広告