『プレイグラウンド』リチャード・パワーズ 著 木原善彦 訳──複数の人生が絡まる海と文明の物語
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
フランス領ポリネシアにあるマカテア島は、かつてリン鉱石採掘で栄え、今は八十二人の島民が平穏に暮らしている。そこに、アメリカ企業による海洋都市建設計画が持ち上がり、島民たちは賛否の投票を行うことに。
主要人物は四人いる。太平洋の島々で育ち、芸術家としてこの島で暮らすイナ。イナの夫で文学と詩を愛する黒人ラフィ。ラフィの高校時代からの親友で、イナと三人でよく行動していたが、ある出来事で疎遠になった白人のトッド。コンピュータマニアのトッドはその後、事業で成功し大富豪となっている。また、数々のプロジェクトに女性ダイバーとして参加してきたイーヴィーは、九十二歳となった今もマカテア島で海に潜っている(海中の描写が素晴らしい)。
彼らのこれまでの人生におけるエピソードのひとつひとつに引き込まれる。ラフィとトッドが再会するのかなと思っていたら、予想外の展開にはっとさせられた。
タイトルの「プレイグラウンド」には作中、複数の意味がある。そのひとつが地球は生命にとって「遊び場」という意味。読み終わった後に、人間や動物が地上や海中という遊び場で戯れている姿を想像すると、切なく愛しくなる。
『クロワッサン』1159号より
広告