『言語化するための小説思考』小川 哲 著──作家はどのように小説を生み出しているか
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
小説家志望はもちろん、そうでなくても本書はじつに面白く読めると思う。執筆時にどういうことを意識し、どのように設定を選び、話を組み立てていくのか、いくつもの短い小説の文例を挙げながら分かりやすく語ってくれている。
自分が特に膝を打ちまくったのは、「情報量の差」の話。多くの読者を獲得する作品は、〈「視点人物と読者の情報量の差を最小化する」戦略によって書かれていることが多いように感じている〉とあるが腑に落ちまくった。小説を読んでいて「なんか読みづらいな」と思う時、たいていは、まさに「情報量の差が大きい」というのが理由。特に新人賞の下読みでは、もったいぶっていちいち情報を後出しにする応募原稿、めちゃめちゃある。つまり、ここを上手く処理している人はそれだけで、かなり見込みがあるように感じる。
文体というものについて、伏線について等々、時に非常に具体的に提示していて、実践でも役立ちそうな情報ももりだくさん。小説家志望ではない私にとって、いちばん効いたのは、「自分はどんな小説が好きなのか」を改めて思い出させてくれたことだ。明日からまた、自分が偏愛できる小説を探していこう。
『クロワッサン』1157号より
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