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『浮世絵おじさんフェスティバル』太田記念美術館──浮世絵に描かれた愛すべきおじさんたち

青野尚子のアート散歩。今回は、浮世絵にたくさん描かれている、味のある「おじさん」に注目した展覧会。よく見ると実に人間くさい、ユーモラスな動きをしている。

文・青野尚子

歌川広重「東海道五拾三次之内 御油 旅人留女」(後期)
歌川広重「東海道五拾三次之内 御油 旅人留女」(後期)

浮世絵には人気の歌舞伎役者や遊女だけでなく、名もなき庶民もたくさん描かれている。その中でも味のある「おじさん」に注目したのがこの展覧会だ。太田記念美術館では2023年に歌川広重によるおじさんにフォーカスした展覧会を開催している。今回はおじさんたちがパワーアップ、葛飾北斎や歌川国芳、小林清親らのおじさんを引き連れて帰ってきた。

小さめに描かれることの多いおじさんはよく見ると実に人間くさい、ユーモラスな動きをしている。茶店で名物のとろろ汁を美味しそうにすするおじさん、宿の前で客引きの女性に服をつかまれて苦しそうにしているおじさん、風にあおられて転がる笠をあわてて追いかけるおじさんは歌川広重によるもの。富士山をバックに旅する渓斎英泉のおじさんは楽しそうに後ろを振り返る。歌川国芳「東都名所 新吉原」では吉原に続く道を行き交うおじさんたちの姿もさることながら、画面右下で寝ている犬もかわいい。葛飾北斎「諸国瀧廻 東都葵ヶ岡の滝」では滝の手前でおじさんが天秤棒を下ろして一休みしている。小林清親の「本所御蔵橋」にたたずむおじさんは後ろ姿になんとも言えない哀愁が漂う。

おじさんたちには小さくても目鼻が描き込まれていて、その表情も味わい深い。簡略化されていても喜怒哀楽が感じられて、絵師の技量を思わせる。一見、とるに足らないと思えるおじさんたちの隠れた魅力に釘づけになってしまう展覧会だ。

歌川国芳「東都名所 新吉原」(前期)
歌川国芳「東都名所 新吉原」(前期)

『浮世絵おじさんフェスティバル』

小林清親「本所御蔵橋」(前期)
小林清親「本所御蔵橋」(前期)

太田記念美術館 開催中~3月1日(日)

楽しそうに笑うおじさん、頑張って働くおじさん。おじさんも人生いろいろだ。2月1日までの前期と5日からの後期で全点展示替え。

太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10) TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 10時30分~17時30分 月曜休(1月12日、2月23日は開館、1月13日、2月3日、4日、24日休) 入館料一般1,000円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1157号より

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