血管にやさしい油と糖との付き合い方は?
撮影・柳原久子、小川朋央(河村さん) スタイリング・高島聖子 構成&文・堀越和幸 撮影協力・UTUWA
【油】 種類を知って、食事の最初に取り入れる
オリーブオイル、米油、エゴマ油、アマニ油、そしてさばやサンマ、イワシなどの魚の油は積極的に摂りたい不飽和脂肪酸。肉の油はバランスを考えながら摂るようにしよう。
油を摂る順番で血糖値をコントロールする
血液と血管を健やかに保つためには、油や糖とはどう付き合えばいいのか? 管理栄養士、トレーナーの河村玲子さんは、食事の際の油を摂るタイミングについて注目をしている。
「食事の最初に油を摂るとインクレチン(GLP1とGIP)というホルモンが小腸より分泌され、血糖値の急上昇を抑えてくれることがわかっています。GLP1とGIPは共に膵臓のインスリンの分泌を促しますが、GIPにはそれと別に直接脂肪に働きかけて脂肪の蓄積をさせる側面があります」
空腹時にいきなり白いご飯を食べると血糖値は急上昇するが、その前に油を少し摂っておけばインクレチンの働きにより、体への負担も軽減される。
「食べる順番のアイデアで、近年はオイルファーストと呼ばれ、血糖値のコントロール法として評価されています」
たくさん種類のある油は何を選べばいいか?
では、食べる油はどんな種類がいいのか? 肉と魚ではその種類が異なる。
「肉の油は飽和脂肪酸、魚の油は不飽和脂肪酸。それぞれに常温で溶けづらい、溶けやすいなどの性質がありますが、双方ともインクレチンの分泌は促すので、食事のはじめに食べるのはどちらも有効と言えます」
ただ、と河村さんは補足する。
「肉は脂肪の蓄積を促すGIPの分泌が多くなるので、GLP1の分泌を促す魚のほうがより好ましいのですが……」
そうとは限らない部分もある。
「肉の飽和脂肪酸をまったく摂らないでいると脳出血のリスクが増すといわれています。飽和脂肪酸は細胞膜や血管壁の材料を作っているからです。程よいバランスが大切なのです」
n-3やn-9など食用油の性質も知っておく
次に食用の油の特徴についても見ていこう。
「飽和脂肪酸はコーン油やごま油などのn-6系、オリーブオイルなどのn-9系、そしてエゴマ油やアマニ油などのn-3系というふうに分類されます。n-6は炎症を誘発する可能性があるので摂り過ぎに注意。n-9は体に悪さをしない油、n-3は体にいい働きをするので積極的に摂っていきましょう」
魚のEPA、DHAもn-3系に分類される脂肪酸だ。
「忙しいので朝から魚料理は食べられないという場合は、例えばn-9のオリーブオイルを冷や奴にかけて最初のおかずとして食べるだけでも、血糖値の急上昇は避けられると思います」
【糖】 食物繊維とセットにして賢く食べる
糖質の中でも小麦のふすまやオートミールの類いは最強の間食に。大麦や玄米、海藻、キノコはいつもの主食に参加させて、食物繊維の働きで血糖値が乱高下しないように工夫する。
ホエイ+オートミールのセカンドミール効果
一方の糖とはどう付き合うべきか? 河村さんがまず挙げた例は、オートミールとヨーグルトの組み合わせ。
「食事の直前にヨーグルトのホエイを摂るとGLP1の分泌が促されます。さらにオートミールに含まれるβグルカン(水溶性の食物繊維)は腸に届くと腸内細菌の餌となってその結果、短鎖脂肪酸が作られ、こちらもGLP1の分泌を促します。これが次の食事の血糖値を上がりづらくするので“セカンドミール効果”と呼んでいます」
うまく取り入れれば、血糖値をコントロールできる。
「ホエイとオートミールのコンビは最強の間食と言えるでしょう。糖とうまく付き合うには、食物繊維に注目することが一つの鍵になります」
主食の糖質は食物繊維とセットで摂る習慣を
かつて日本人の食生活はそれなりに食物繊維が摂れていた。
「野菜だけの話ではなく、昔は一食のご飯を200gくらい、それを3食食べていたので、お米から食物繊維が摂れていた割合が多かったんです」
それが近年は糖質制限などの影響で米の摂取量がすっかり落ちてしまった。
「であるならば、量ではなく食べ方を変えてみましょう」
河村さんの提案は主食に食物繊維を多く含む食材をプラスするというもの。
「例えばキノコ類や海藻類など。私はよく炊飯器にワカメやしめじを入れてお米と一緒に炊いて食べています」
大麦や五穀米などももちろん有効だ。
「玄米はビタミンB₁も豊富なので、糖の代謝にも一役を担ってくれます」
『クロワッサン』1154号より
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