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『「わかってもらう」ということ』著者 川添 愛さんインタビュー ──「自分は何のために話すのかを考えました」

言語学者として作家として活躍する著者が、実体験を通して得た教訓。『「わかってもらう」ということ』──本を読んで、会いたくなって。著者の川添 愛さんにインタビュー。

撮影・北尾 渉 文・堀越和幸

川添 愛(かわぞえ・あい)さん 1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士取得。著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『精霊の箱(上・下)』『聖者のかけら』『ヒトの言葉 機械の言葉』など、題材によって、小説、エッセイを書き分ける
川添 愛(かわぞえ・あい)さん 1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士取得。著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『精霊の箱(上・下)』『聖者のかけら』『ヒトの言葉 機械の言葉』など、題材によって、小説、エッセイを書き分ける

言語学者、川添愛さんの新刊は人と人とのコミュニケーションを語る本だ。相手に何かを伝えようとしても自分の言いたいことがなかなかわかってもらえない。どうすればいいのか?

「このテーマを編集の方からいただいた時は、私はあまり話すのが得意なほうではないので自分に書けるかなと心配でしたが、若い頃に失敗したことなどを振り返ると、その時よりはさすがに今はわかってもらえるようになっている気がする。それでは、かつては何がいけなかったのか、と思い出しながら書き始めました」

例えば何人かのグループで話をしている時の自分を注意深く観察してみると、一見、他人のために言葉を発しているようでも、何か気の利いたことを言おうとしたり、聞いている相手の気を引こうとしてちょっと大袈裟なことを言ったりする自分がいる。

「私が発する言葉の大部分は自分がいい気分になるためのものであって、相手にわかってもらうためのものではありませんでした」

そういう思いが強い時ほど、ほかの人が言うことをきちんと聞いていないので、コミュニケーションはさらにうまくいかなくなる。

私の話すことは、つまらないんじゃないか……。

話すことで自分が気分よくなりたいという思いは誰にでもあること。でも、なぜそうなるのか?

「自分の存在が埋もれてしまわないか? あるいはちゃんと受け入れられているか? そういう不安が根っ子にあるのかもしれません」

一方で、話すことに日頃から苦手意識を持つ人は“人は自分の話を聞いてくれないのではないか”“私の話はつまらないんじゃないか”とつい考えてしまいがちである。けれども──。

「仮に相手がつまらなさそうに聞いていたとしても、それがその人のデフォルトの顔かもしれない。実際につまらなさそうだったのに後になってからあの話は面白かったと言われたこともあります」

本作では折に触れて、川添さんの過去の失敗談が明かされる。大学院生だった時代に臨んだアメリカでの国際学会で、会場から何の反応も得られず話せば話すほど頭が真っ白になってしまったことは川添さんにとっての黒歴史だ。

「実は自分の話す内容に自信がなかったくせに発表する準備すらろくにしていなかったのです。当時はその後に精神的な危機にも陥りましたが、今はこうして本で紹介もできたから、つらかった記憶を成仏させてもらえたかなと(笑)」

人に伝わる話のポイントのひとつとして、本作では“自信”というキーワードを挙げている。

「自分で自信がない話に人は耳を傾けません。また、はなから相手にネガティブな気持ちがあると、わかってもらうのは難しくなります。相手の気持ちを決めつけないで、自分を信じて、相手も信じることが大事です」

実体験から導いた言語学者の分析にはなるほど強い説得力がある。

『「わかってもらう」ということ』 言語学者として作家として活躍する著者が、実体験を通して得た教訓。 KADOKAWA 1,760円
『「わかってもらう」ということ』 言語学者として作家として活躍する著者が、実体験を通して得た教訓。 KADOKAWA 1,760円

『クロワッサン』1153号より

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