『水族館のひみつ 海洋生物学者が教える水族館のきらめき』泉 貴人 著──レジャー施設とは別の側面で見る水族館
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
『なぜテンプライソギンチャクなのか?』の著者でもある海洋生物学者による、ちょっとマニアックな水族館案内本である。中学生の時から全国の水族館巡りを始め、その研究成果をSNSにアップしてきた著者は、「Dr.クラゲさん」としても知られている。自画自賛しつつツッコミを入れる軽快な文章で、非常にわかりやすく水族館の裏側を紹介している。水族館がレジャー施設だけでなく学術施設の面も大きいことが分かってくるのが面白かった。
魚たちはどのように集められているのか(網や釣りで採集することもある)、その際の漁業権について、ワシントン条約のこと。水族館にとって展示しやすい生物は何か。バックヤードの予備水槽には控え組や繁殖期の生物がいること。
クラゲは水底に沈むと自重でつぶれて死ぬことがあり、飼う時は常に水流で吹き飛ばしてあげる必要があること。水槽内で怪我したり病気になったり命を落とした生物はどうなるのか……。
著者が贔屓にしている山形の加茂水族館のエピソードが多く、行きたくなった(面白すぎる)。北から南まで、著者が実際に行った水族館やおすすめ度(というかマニア度)等の一覧もあって便利。
『クロワッサン』1153号より
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