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お米のプロに聞く、お米をおいしく食べるコツと技

お米だけは絶対においしく食べたい! 保存、計量、洗米、炊飯、飯きり、便利グッズまで──毎日の食事に欠かせないごはん、おいしく食べるコツと技を、米・食味鑑定士でお米ライターの柏木智帆さんに伺いました。

撮影・柳原久子 構成&文・中條裕子

好みのお米できちんと炊けば、いつものごはんがもっとおいしく

お米のプロに聞く、お米をおいしく食べるコツと技

「お米の味わいは一期一会」と断言するのは、年間400種のお米を試食し、日々ごはんと向き合ってきた、お米ライターの柏木智帆さん。

「同じ品種でも栽培により、柔らかさや粒立ち、粘りが変わってくるので、好みのお米と出合うにはいろいろ食べてみるのが一番。まずは、さっぱりかどっしりか、どちらが好きかイメージするとわかりやすいと思います」

米のでんぷんはアミロースとアミロペクチンという成分でできており、その割合の比率によって、粘りや食感に違いが出てくるのだという。

「アミロペクチンが多い低アミロース品種は、もちに近いどっしりとした食べ心地で、甘みも出やすい。〈ミルキークイーン〉や〈ゆめぴりか〉が代表的。さっぱり系は〈ササニシキ〉が知られていますが、私はしゃっきり粒立ちのよい〈雪若丸〉が好きで、このお米で卵かけごはんが食べたくなります」

好みのお米に出合うことともう一点、気を付けるべきは、ごはんの炊き方だという。ポイントを押さえて、一番いい状態で食べることが何より大切に。

STEP 1 保存

容器や袋が樹脂製の場合、微量の空気を通すので野菜室がおすすめ
容器や袋が樹脂製の場合、微量の空気を通すので野菜室がおすすめ

購入したお米は密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存する

好みの食べ心地のごはんに出合うためにも、お米は少量ずつ購入するといろいろ試せるうえ、劣化する前に食べ切ることができて無駄にならない。「お米の持ち味を楽しんで食べ切るには2週間が目安。それ以降ももちろん食べられないわけではありませんが、少しずつ劣化は進んでいます。そのため、お米は購入したら冷蔵庫で保管するようにしてください。密閉容器に入れて、野菜室がベター。ジップロックなどの袋に入れる際は、古いぬかが新しいお米に付着しないよう、使い回しは避けたほうがいいでしょう。私は保湿性に優れたアルミ製の密封袋も使っています」。お米は精米後から酸化が進むので、できるだけ空気に触れさせないことが大事。密閉容器を活用して冷蔵庫に保存しながらなるべく早めに食べ切る、を心がけたい。

お米のプロに聞く、お米をおいしく食べるコツと技

これがオススメ
お米のための保存袋 3kg 110円。ロック機能付きバルブで空気を抜いて鮮度が長持ち。アルミ加工。底にマチがあるので立てて使えるのも便利。(ダイソー https://jp.daisonet.com

STEP 2 計量

スケールにボウルをのせ、ゼロ表示にして計量を(カップの場合は箸などを使い、すり切りにする)
スケールにボウルをのせ、ゼロ表示にして計量を(カップの場合は箸などを使い、すり切りにする)

キッチンスケールを使ってお米と水の量を正確に計量

お米は粒により大小があるため、実は計量カップでは正確に量ることはできないのだという。「1合ならたいした量ではなくても、2〜3合となるとだんだん誤差が大きくなっていきます。炊飯水にもカップを使うと、さらに誤差は大きくなる。なので、私は普段からゼロ機能表示付きのキッチンスケールで計量しています。ボウルをのせて目盛りをゼロにしたら、お米を入れるようにしてください」。米と水の量は、1合であれば米150g/水200g、2合なら米300g/水400gが目安。計量カップのほうが使い慣れているという人は、お米を入れた後に容器をトントンと叩いてならし、箸できっちりとすり切りにするようにして。お米の量を少しでもより正確に計量することが、おいしく炊くための必要なひと手間に。

STEP 3 洗米

まずはお米を冷水にさっとくぐらせる。 1. 計量したお米をザルに入れ、ボウルに冷水をたっぷりと注ぐ。 2. お米をザルごとボウルに浸す。 3. さっと混ぜてすぐにザルを上げる。ボウルの濁った水を捨て、お米をボウルに移して洗米を始める
まずはお米を冷水にさっとくぐらせる。 1. 計量したお米をザルに入れ、ボウルに冷水をたっぷりと注ぐ。 2. お米をザルごとボウルに浸す。 3. さっと混ぜてすぐにザルを上げる。ボウルの濁った水を捨て、お米をボウルに移して洗米を始める

冷水を使って手早く優しく、ぬかを除くようにして洗う

お米は最初に触れた水の1割を吸う。まずはザルに入れ、下の写真1〜3の手順で冷水にさっと浸してから洗うのがコツ。「冬は水道水で問題ないけれど、春先から残暑の頃までは冷蔵庫で冷やした水を使ってください」。この後に、お米をボウルに移して再び冷水を注ぎ、指を丸めた状態でボウルの底をなで回すように軽く混ぜて洗う。そのお米をまたザルに戻し、水を張ったボウルに再びつけて軽く揺らしながらすすいでいく。「洗うときは手早く優しくぬかを除くように、2回ほどこの作業を繰り返してください。水が完全に透明にならなくても大丈夫。ザルは米が詰まらない目の大きさのものが便利。無印良品のザルとボウルが私は使いやすかったです」。温かい水を使うと、炊いたときごはんの食感が悪くなりがちなので注意したい。

STEP 4 吸水

低温に置くことで、ゆっくりとお米の隅々まで水分が浸透する
低温に置くことで、ゆっくりとお米の隅々まで水分が浸透する

お米に冷たい水を注いだ後は、冷蔵庫に入れて6時間は置く

ごはんを炊くまでの工程の中でも、大きなポイントとなるのが吸水。「ふっくらと炊き上げるには、冷蔵庫で6時間以上吸水させることが大事です。面倒なように思えますが、翌朝用には寝る前、帰宅時用には出勤前と、リズムができてしまうと意外と簡単。浸かる時間が長くなる分には大丈夫ですが、水に浸けたお米は必ず冷蔵庫に入れるようにしてください」。柏木さんは普段10時間ほど吸水時間を設けているとのこと。「お米と水を入れたボウルやお釜にラップを毎回かけているともったいないので、私は食器用のカバーを使っています。何回か使えるので便利ですよ」。冷蔵庫に6時間以上というとハードルが高いように思えるが、これだけでふっくら粒立ちも変わるとなると、寝る前、出かける前のひと手間も無理なく続けられそう。

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食器用キャップ式カバー(32枚)110円。広げるとシャワーキャップのような形となり、伸縮ゴムが付いているので皿やボウルにかぶせるだけでほこりが入るのを防げる。(ダイソー)

STEP 5 炊飯

炊飯途中に蓋を開けると、鍋の熱が逃げて炊き上がりに影響が出てしまうことも
炊飯途中に蓋を開けると、鍋の熱が逃げて炊き上がりに影響が出てしまうことも

火加減と時間に気を付けながらごはんをふっくら炊き上げる

お米の味わいは炊飯の道具によって変わる、と柏木さん。お米の旨みを引き出してくれる鍋や釜を使った炊飯は、慣れるとそれほど手間も時間もかからない。「鍋や釜は材質や形状によって炊き上がりが変わります。私が使っている中で初心者にも安心なのが、音や泡で沸騰が確認できるタイプ。これなら蓋を開けなくても弱火にするタイミングがわかるので、失敗がありません。ほかにも、少量炊きでもおいしく手入れしやすい土鍋や、玄米炊きには二重蓋でもちもちに炊ける鍋もあります」。いずれの場合も火加減と時間が大事。点火から8〜10分で沸騰するよう中強火〜強火にかけ、沸騰したら弱火に。「その後はそれぞれの鍋や釜により異なるので説明書どおりに炊いてください。いずれも吸水させた水をそのまま使うことが基本です」

STEP 6 蒸らし

炊飯が終わってもすぐには蓋を開けずに、仕上げの蒸らしまでしっかりと
炊飯が終わってもすぐには蓋を開けずに、仕上げの蒸らしまでしっかりと

火を消して目安は10分ほど、仕上げの熱をしっかり入れて

炊飯の時間も終わり、コンロの火を消したらすぐに蓋を開けて確認したい……のはやまやまだが、ここはぐっと我慢して。「蒸らしが終わる前に蓋を開けるのは、炊飯中に蓋を開けるのと変わりません。ごはんの表面が水っぽくなっているのを見てツヤツヤだと思うのは誤解です。蒸らすことで仕上げの熱が入り、ごはんの表面に残った水も吸われてしっかり炊き上がります」。鍋の蒸らし時間はだいたい10分が目安とのことだが、これも材質や形状により異なるので、説明書を参考にして。

STEP 7 飯きり

ごはんの粒を潰さないように優しくほぐす
ごはんの粒を潰さないように優しくほぐす

しゃもじでごはんを十文字に切ってから上下に返す

蒸らしが終わったら、しゃもじを使ってごはんを上下に返す飯きりを。「蒸らしすぎるとごはんがくっついたり、蓋の水滴が落ちて水っぽくなってしまうので、すぐに飯きりをしてください。やり方はしゃもじでごはんを十文字に切って4つの部屋に分け、それぞれを上下に返してほぐします。ごはんの量が少ない場合は、2つの部屋に分けるのでもかまいません。しゃもじは、先端が薄くてごはんがつきにくい材質、形状のものがよいでしょう」。飯きりは、炊きムラを均一にしたり、余分な水分を飛ばす大切な工程。あとは、ふんわりとお茶碗にごはんをよそうだけ。このときにも、ちょっとしたコツが。ごはんをのせたしゃもじを返さず、茶碗にスライドさせるようにして入れ、少量ずつよそうといいとのこと。

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極しゃもじプレミアム1,078円。剥離性の高い樹脂を使用したエンボス加工でごはんがつきにくく、背面に突起があり平置きしても先端が浮いて衛生的。(マーナ https://marna.jp/

  • 柏木智帆

    柏木智帆 さん (かしわぎ・ちほ)

    米・食味鑑定士、お米ライター

    さまざまなメディアでお米の魅力を伝える。「日本水稲品質・食味研究会」評議員。著書に『知れば知るほどおもしろいお米のはなし』『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』。

『クロワッサン』1151号より

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