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建築家・吉田愛さんがおすすめする“名建築”の宿──いま泊まりたい、くつろぎの宿

年月が刻む重みあるホテル、新たな装いで出迎えるホテル。建物を目当てに行きたくなる2軒を建築家・SUPPOSE DESIGN OFFICE代表の吉田愛さんに教えてもらいました。

撮影・川村恵理(ホテリ・アアルト)、嶌原佑矢(奈良ホテル) 文・保手濱奈美

【推薦者】吉田 愛(よしだ・あい)さん
建築家、SUPPOSE DESIGN OFFICE代表
2014年、谷尻誠さんとSUPPOSE DESIGN OFFICEを設立。建築を軸に、飲食やゲストハウスのディレクションなど多方面で活動。

吉田 愛さんに聞いた、大人が心地よい宿の条件って?
見せかけではないホスピタリティがあること──「表層的なことでは心を動かされなくなるのがこの世代。客室にまで床暖房が敷かれていて快適に眠れる、座った時に心地よい高さに明かりがあるなど、写真にするとわからない、じんわりとした心遣いのある宿が好きです」

ホテリ・アアルト(福島県・北塩原村)

リノベーションを経て2009年にオープン。高原の緑に味わいある木の建物が佇み、まるで物語の中の景色のよう
リノベーションを経て2009年にオープン。高原の緑に味わいある木の建物が佇み、まるで物語の中の景色のよう
バルコニーからエメラルドグリーンの”鷺沼”を望む離れの客室「101」。16畳の和室と囲炉裏が自慢
バルコニーからエメラルドグリーンの”鷺沼”を望む離れの客室「101」。16畳の和室と囲炉裏が自慢

室内に映り込む景色が美しく見飽きない

ホテルの設計を手掛ける立場でもある建築家の吉田愛さんが、空間、光、環境、ホスピタリティ……そのすべての調和に魅せられたという〈ホテリ・アアルト〉。

「益子義弘さんのリノベーション設計による北欧と日本の入り混じった世界観が魅力。木のぬくもりなど北欧のテイストが表層的ではなく、自然となじんでいる。少し低い天井や畳のある客室といった和の趣とも相性がいい。あまりに居心地がよいので、初めて行った時は急遽延泊するほどでした」

裏磐梯にある国立公園内の高原地という緑豊かなロケーション。敷地内には底が見えるほど透き通った水をたたえた沼もある。

「その景色が窓ガラスをとおして室内に映り込む様子がなにより美しい。これほど自然が豊富にあると開口を大きく取りがちですが、比較的控えめという設計にも和に通じる美意識を感じます」

それはまさに益子さんが意図したところ。ピクチャーウィンドウ越しに眺める景色が最高の贅沢。

夕食と朝食は中庭の景色を堪能できるダイニングでいただく
夕食と朝食は中庭の景色を堪能できるダイニングでいただく
ラウンジは「テーブルに映り込む光と窓外の景色、それによる奥行きや水平ライトの影響で、どこか浮遊感があります」
ラウンジは「テーブルに映り込む光と窓外の景色、それによる奥行きや水平ライトの影響で、どこか浮遊感があります」
オーケ・アクセルソンの椅子など、家具は北欧作家の名作が揃う
オーケ・アクセルソンの椅子など、家具は北欧作家の名作が揃う
「101」など離れや別館の5室には、絶景に面した源泉かけ流しの温泉がついている
「101」など離れや別館の5室には、絶景に面した源泉かけ流しの温泉がついている
夕食と朝食は中庭の景色を堪能できるダイニングでいただく
ラウンジは「テーブルに映り込む光と窓外の景色、それによる奥行きや水平ライトの影響で、どこか浮遊感があります」
オーケ・アクセルソンの椅子など、家具は北欧作家の名作が揃う
「101」など離れや別館の5室には、絶景に面した源泉かけ流しの温泉がついている

福島県耶麻郡北塩原村大字檜原字大府平1073-153 TEL:0241-23-5100 磐越西線「猪苗代」駅から送迎あり(要予約)。1泊1名3万5000円~(2名1室利用時、夕朝食付き)。https://www.hotelliaalto.com 全18室(ロッジ1棟含む)の部屋から予約。

建築家・吉田愛さんがおすすめする“名建築”の宿──いま泊まりたい、くつろぎの宿

奈良ホテル(奈良県・奈良市)

ロビーの吹き抜けは約9mという高さ。春日大社の釣燈籠をモチーフにした和風シャンデリアが目を引く
ロビーの吹き抜けは約9mという高さ。春日大社の釣燈籠をモチーフにした和風シャンデリアが目を引く
ロビーの一角。和洋の調和を感じさせる
ロビーの一角。和洋の調和を感じさせる
ロビーの吹き抜けは約9mという高さ。春日大社の釣燈籠をモチーフにした和風シャンデリアが目を引く
ロビーの一角。和洋の調和を感じさせる

和洋折衷の歴史的傑作がここに

名建築として名高い〈奈良ホテル〉は、吉田さんにとっても感性を刺激される一軒だという。

「なかに入ってまず目にするのが、圧倒的な吹き抜けの空間。床に敷きつめられた赤い絨毯と、大階段の木の手すりなど、和洋のコントラストが1世紀という時を経ても洗練されている。辰野金吾さんが設計した建築のなかでも、和の要素を強く感じさせます」

辰野氏といえば、東京駅や日本銀行本店などの設計で知られる歴史的な建築家。吉田さんは、館内のバーにもその神髄を感じるそう。

「赤いソファに小さなテーブル。メニューやサービスも創業当時から大切に継承されている印象で、タイムスリップしたような感覚に」

来年1月から新館リニューアル工事で全館休業予定。今こそ訪れて。

大階段の手すりには、神社や橋など伝統的な建物に顕著な装飾「擬宝珠」が施されている
大階段の手すりには、神社や橋など伝統的な建物に顕著な装飾「擬宝珠」が施されている
興福寺五重塔(現在保存修理工事中)と東大寺の鐘楼がデザインされた、本館ロビー奥のすりガラス
興福寺五重塔(現在保存修理工事中)と東大寺の鐘楼がデザインされた、本館ロビー奥のすりガラス
本館1階にある『ザ・バー』。ランプのほの灯りがクラシックな雰囲気を引き立てる
本館1階にある『ザ・バー』。ランプのほの灯りがクラシックな雰囲気を引き立てる
大階段の手すりには、神社や橋など伝統的な建物に顕著な装飾「擬宝珠」が施されている
興福寺五重塔(現在保存修理工事中)と東大寺の鐘楼がデザインされた、本館ロビー奥のすりガラス
本館1階にある『ザ・バー』。ランプのほの灯りがクラシックな雰囲気を引き立てる

奈良市高畑町1096 TEL:0570-66-6088 近鉄奈良線「近鉄奈良」駅より徒歩15分。1泊1名3万1600円~(2名1室利用時、朝食付き)。https://www.narahotel.co.jp 桃山御殿風檜造りの本館と、1984年に増築された新館からなる。

建築家・吉田愛さんがおすすめする“名建築”の宿──いま泊まりたい、くつろぎの宿
*紹介している宿泊料金は2025年7月現在のものです。また、サービス料、宿泊税、入湯税などが別途かかる場合があります。

『クロワッサン』1148号より

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