『魔法を描くひと』白尾 悠 著──あのアニメ会社で働く女性たちの奮闘
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
1937年アメリカ。レベッカは思い切った行動で世界的なアニメーション会社、スタジオ・ウォレスに入社を果たす。しかし男女格差は厳しく、男性たちに馬鹿にされながらも、レベッカは同僚女性たちと友情を育みながら仕事に臨んでいく。しかし彼女たちを待ち受けているのは、戦争、レイオフ、赤狩り……。
一方、20XX年の東京。スタジオ・ウォレスの日本支社で働く真琴は、古いデザイン画が見つかったことをきっかけに、知られざる女性アニメーターたちの存在に気がつく。
ふたつの時代を行き来するなかで、女性たちのアニメや仕事への思いと喜び、格差との闘い、同僚たちとの関係の変化などが交錯していく物語である。
アニメ会社のモデルは誰もが想像つくと思うが、実際著者はウォルト・ディズニー・ジャパンで働いていた経験があり、登場するアニメーターたちにはモデルがいるそうだ。作中で言及されるアニメも、「あの映画だな」と分かり、観返したくなってくる。真琴が苦手だった正社員の女性とお互いの立場や思いを理解していく様子もよかった。働いている私たち、一緒にがんばろう、と思った一作。
『クロワッサン』1141号より
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