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『安藤忠雄展|青春』VS.──半世紀を超えてなお「青春」を生きる建築家の軌跡と未来

青野尚子のアート散歩──今回は、安藤忠雄自身が設計監修した大阪の〈VS.〉で開かれている『安藤忠雄展|青春』。

文・青野尚子

〈水の教会〉 (c)安藤忠雄展|青春 2025
〈水の教会〉 (c)安藤忠雄展|青春 2025

端正な建築に大胆なアイデアを実現する安藤忠雄。彼が拠点とする大阪で個展が開かれている。会場は自身が設計監修した〈VS.〉だ。安藤も尽力した大阪駅前開発プロジェクトの第二弾、「グラングリーン大阪」の一角にある。

ハイライトのひとつは〈水の教会〉の原寸で再現した展示だ。実際に水が張られ、四季折々に移り変わる景色が映像で映し出される。天井高15メートルのスタジオの3面に映像が映し出される没入型展示も圧巻だ。〈光の教会〉など3つのプロジェクトの実物の映像や安藤のスケッチが観客を包み込む。

膨大な作品の中でも、直島と「こども本の森」の展示はとくに注目だ。37年にわたって10の建物を設計してきた直島には世界各地から多くの人が訪れる。

「島の人々の笑顔のために」という安藤の思いが着実に形になっている。大阪・中之島を始め数カ所で実現している「こども本の森」は子どものための本の施設。読書家で知られる安藤だが若いころは本を読む環境になく、後に後悔したという。「こども本の森」では子どもたちが公園で遊ぶように本に夢中になっている。若い世代の可能性を広げる空間だ。

展覧会タイトル「青春」の背景には詩人サムエル・ウルマンの「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を言う」という詩がある。いつまでも青春を生きる安藤にとってこの個展はひとつの通過点だ。そのエネルギーが観客にも勇気を与えてくれる。

〈VS.〉外観 (c)安藤忠雄展|青春 2025
〈VS.〉外観 (c)安藤忠雄展|青春 2025

安藤忠雄は1941年、大阪生まれ、独学で建築を学び、’69年に建築設計活動を始めた。’90年代以降は環境再生や震災復興など社会貢献事業にも尽力している。

『安藤忠雄展|青春』
開催中〜7月21日(月・祝)
VS.(大阪市北区大深町6・86 グラングリーン大阪 うめきた公園ノースパーク)
10時〜18時(金・土・祝前日〜20時、入場は閉館の30分前まで) 月曜休(祝日は開館)
入館料一般1,800円ほか

  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1140号より

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