漫画だからこそ心に届く、考える——視野を広げてくれる注目作
日本のみならず、世界中の人々を魅了している「漫画」。小さい頃から慣れ親しんでいる読者も多いはず。キャラクターたちが読み手に教えてくれることは多く、心に訴えかける力も大きい。漫画のスペシャリストがうなる作品を紹介します。
漫画のスペシャリストをご紹介
トミヤマユキコ（とみやま・ゆきこ）さん マンガ研究者
東北芸術工科大学芸術学部准教授。著書に『少女マンガのブサイク女子考』など。2024年イチオシは『これ描いて死ね』（小学館）。
青柳美帆子（あおやぎ・みほこ）さん ライター
女性向けカルチャー、マンガやアニメのエンタテインメントを中心に執筆。2024年イチオシは『ありす、宇宙までも』（小学館）。
薗部真一（そのべ・しんいち）さん 編集者
1978年生まれ。漫画好き必読のムック『このマンガがすごい！』元編集長。2024年イチオシは『室外機室 ちょめ短編集』（双葉社）。
吉川明子（よしかわ・あきこ）さん ライター、編集者
小さい頃から漫画好き。『BRUTUS』『anan』『mi-mollet』等で漫画紹介記事を執筆。2024年イチオシは『ねずみの初恋』（講談社）。
知らない世界って、面白い
ページをめくるだけで、日常生活では触れることのない世界に飛び込めるのは、漫画の魅力！知的好奇心が刺激されるはず。
おかざき真里『胚培養士ミズイロ』
自らの手で精子と卵子を受精させ、小さな命を導く胚培養士という職業にスポットを当てたヒューマンドラマ。男性不妊や高齢出産、夫婦の関係などといった難しいテーマを丁寧に描く。
「胚培養士という生殖補助医療のスペシャリストの仕事が詳細に描かれており、興味津々。命に関わることなので、シリアス&ハードな場面もありますが、それでも命の誕生にかかわるプロの技術にはワクワクさせられます」（トミヤマさん）
高野文子『ドミトリーともきんす』
寮母のとも子さんと娘のきん子ちゃんが切り盛りする学生寮「ともきんす」。ここに暮らすのは、朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹といった“科学する人たち”。
彼らが遺した言葉をひもといていく。「科学者の言葉を、漫画家ならではの方法で“立体化”する。わかるようなわからないような不思議なアクセスで解き明かしていく、“感じでわかる”漫画です」（薗部さん）
黒丸『東京サラダボウル－国際捜査事件簿－』
東新宿署国際捜査係の鴻田麻里と中国語の警察通訳人・有木野了という異色バディが主役。日本での国際犯罪の現実や、犯罪関係者たちの過酷な立場を描く。
「NHKでドラマ放送中。警察のお仕事モノでありつつ、在住外国人が直面する問題を巧みに描く。有木野の過去にまつわるミステリ要素もあり。
各国料理も多数登場。約70万人もの外国人が暮らす東京は、改めて国際都市であることを実感。ドラマ化を機に、続編希望！」（吉川さん）
空木哲生『山を渡る ‒三多摩大岳部録‒』
大学の山岳部と大自然の山々を舞台にした、青春群像劇。伝統ある三多摩大学山岳部は現在、部員不足で存続の危機に。そんな中、入部してきたのは登山経験ナシの女子3人。果たして活動していけるのか？
「山岳部の中級者である先輩たちと初心者である1年生がチームを組んだり、時としてそれぞれでチームとして向かったりして、山に登る楽しさを伝えてくれます。山の描写も気持ちよく、登山が趣味でなくてもぐっとくるはず」（青柳さん）
『クロワッサン』1136号より
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