鴻巣友季子さんが今読みたい本 テーマ「小さな本の魅力」
本は私たちに何を与えてくれる?第一線で活躍する鴻巣友季子さんが「小さな本の魅力」をテーマに選書した必読の3冊をここに。
撮影・黒川ひろみ 文・鴻巣友季子 構成・堀越和幸
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左・『三部作』(ヨン・フォッセ著、岡本健志、安藤佳子訳、早川書房、3,245円)
劇作家、詩人でもあるノルウェーの作家ヨン・フォッセによる連作中編集。雨の中、海辺をさまよう若き恋人たちの人生を幻想的な筆致で追う。カギかっこ、句点のない独特の文章スタイルが詩的な世界観を作り上げる。
中上・『川のある街』(江國香織著、朝日新聞出版、1,870円)
川のある3つの街を舞台に、両親が離婚した少女、河口近くに棲息するカラスや街に住まう妊婦たち、そして認知症が進行する老女と、それぞれの視点で日々を見つめる3編の作品集。濃密な性の営みを細やかな筆致で描く。
中下・『救出の距離』(サマンタ・シュウェブリン著、宮﨑真紀訳、国書刊行会、3,300円)
アルゼンチンの片田舎の診察室で死にかけている女アマンダ、その横にたたずむ謎の少年ダビ。彼女はなぜ死にかけているのか? 二人の対話を通してその記憶を探っていく、2017年国際ブッカー賞最終候補になった話題作。
右・『とるに足りない細部』(アダニーヤ・シブリー著、山本薫訳、河出書房新社、2,200円)
1949年に起きたイスラエル軍による少女のレイプ殺人と、その真実を追いながら現代でその痕跡を辿るパレスチナ人女性。2つの時代における極限状況下の〈日常〉を抉る傑作中編。2021年国際ブッカー賞最終候補。
『クロワッサン』1136号より
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