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中央線の楽しみ ここまで東西に長く連なる沿線文化は世界でも珍しい

昔ながらの喫茶店や横丁、店主との会話が弾む個人商店。多種多様な文化がいまも息づく独特なエリアの魅力に迫ります。

撮影・山本康平 文・嶌 陽子 イラストレーション・目黒雅也

コロナ禍のときに見えた個人店の持つ人のつながり。

目黒 中央線エリア、特に西荻周辺は小規模な店舗が多いので、ここで実験的に新しいことに挑戦してみる人が多いのも特徴だと思います。

ファーラー 確かに、ウズベキスタンバーとか、もう別の町に移転してしまったけれどパイナップルラーメンとか、不思議なお店も出てくるのも魅力かもしれません。

目黒 そんなふうにして、古い店と新しい店が混在している。もしも町が大規模開発されてしまったら、成功した人やチェーン店が入ってくるだけになってしまいそうです。

ファーラー 個人店の良さは、人と人とのつながりだと私は思っているんです。お客さんとオーナーのつながり、お客さん同士のつながり、オーナー同士のつながりの3つがあって、個人店はその3つを全部守っている。チェーン店の場合、オーナーとお客さん、もしくはお客さん同士が話すことはほとんどないし、オーナー同士も話さないでしょう。

個人店は人のつながりを守ってくれるんですよね。
個人店は人のつながりを守ってくれるんですよね。

目黒 個人店はオーナー同士がつながっているから、自分の店だけお客さんをとろうとしない。酒場にしても、お客さんが気兼ねなく地元ではしご酒ができて、それが町全体の活性化にもつながっている気がします。

ファーラー コロナ禍のとき、お客さんが離れてしまって町から消えていったチェーン店はけっこうありました。でも個人店は、お客さんが応援したり手伝ったりして、店を守ろうとした。もともとあったつながり、コミュニティの力が発揮されたんだと思います。

目黒 あの時期は、住民が地元の個人店を見直すという、逆の動きも見聞きしました。今まで敷居が高いと思われていた店がテイクアウトを始めてすごく人気が出たり。

ファーラー 小さな店は人と人がつながりやすいんですよね。

この辺りはまだまだそういう小さな店が残っています。
この辺りはまだまだそういう小さな店が残っています。

世界一乗り降りしている人が多い路線かも?

ファーラー 新宿駅は世界一乗降客が多い駅だから、おそらく中央線も世界一多くの人が乗り降りしている電車だと思うんです。そういう意味でも特別。多くの人が関わって、互いに行き来する路線だから、駅ごとの特徴がありつつ、それぞれに影響を与え合っている気がします。人も町も実はつながっているんですよね。

目黒 サブカルチャー的なものも生まれやすくて、作品づくりの素材には事欠かない。抽象的な表現ですが、不思議な磁場があるんです。

ファーラー 都会すぎず、観光地ではない点も大きいのかも。駅前はにぎやかだけれど、少し離れると静かな住宅地で、自然が豊かですから。

目黒 今後もし建物が老朽化したとしても、大きなビルを建てるのではなく、小さな個人店をリニューアルしていくかたちで町の良さを守っていってほしいですね。

西荻窪の町を歩く。「意外な場所に新しいお店ができていることがあるのが面白い」と目黒さん。
西荻窪の町を歩く。「意外な場所に新しいお店ができていることがあるのが面白い」と目黒さん。

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