選び方から使い分けのコツまで、マニアが語りつくす、洗剤のすべて。
撮影・小川朋央 文・中島茉莉花 撮影協力・錫村商店事務所
虚実ないまぜの情報に右往左往することが多い時代。洗剤選びも同様ではありませんか? 結果、洗剤の無駄遣いをしているかも。2人の専門家が持つべき洗剤をズバッと選定!
藤原千秋さん(以下、藤原) 洗剤選びで念頭に置かなければいけないのは、掃除の目的です。暮らしの汚れで言えば、体に害がない状態にすることがそれにあたります。食中毒を起こさないため、湿疹や蕁麻疹が出ないようにするため、呼吸器に影響が出ないためといった具合です。本来「こまめな掃除」をし、汚れをため込まないことが大切になるというわけです。そこで、私がいちばん使うのは中性洗剤なんです。
錫村聡さん(以下、錫村) 仕事や育児、家事に追われていると、その「こまめ」がなかなか難しい。でも中性洗剤を使えば、その難易度を下げられますよね。
藤原 そうなんです。重度じゃなければたいていの汚れが落ち、様々な場所で使え、体に害が少なく、家や道具を傷めにくい。強めといわれる酸性やアルカリ性の洗剤は、使うにあたって多くの注意を払う必要があったり、掃除終わりまで手間と時間がかかったりして、厄介なことがあります。でも中性洗剤なら、比較的手軽に使えるものが多い。「こまめな掃除」を続けられます。
錫村 僕は仕事柄、一度で掃除を済ませなければならないので、その厄介なほうの、強い洗剤を使うことが多いです。確かに使う時には細心の注意が必要ですが、反面、ハードな汚れがすっきり取り去れ、達成感がすごい! ふつうに暮らしていても、そういった洗剤が必要な場面もありますよね。ですから、今日、僕からは、困った時の最終兵器になる洗剤をご紹介します。
汚れと洗剤の相性を知らないと掃除し間違いが起こってしまう。
藤原 こまめな掃除を心がけていても、太刀打ちできない汚れはありますね。中性洗剤で擦り続けていたら、落ちるどころか悪化してしまった風呂椅子の黒ずみや鏡の水垢とか。一瞬で真っ黒になってしまった鍋底の焦げとか。
錫村 汚れの初期でも、中性洗剤では落とせない汚れは存在します。浴室の黒ずみはその筆頭。石鹼カスと水のミネラル分が結合して硬化した「金属石鹼」と呼ばれるものですね。深刻なカビも同様。これらは、専用のカビ取り洗剤や酸性洗剤を正しく使わないと落ちません。
藤原 汚れと洗剤それぞれに種類があることと、両者の相性(下図参照)を多少でも知っておくと、難しい汚れにも対応しやすくなりますね。
錫村 大まかにお話ししておくと、洗剤は、溶液中の水素イオン濃度ペーハー(pH)値によって「中性」「酸性」「アルカリ性」の3つの液性に分けられます。pH7あたりの洗剤が「中性」、それより小さいと「酸性」、大きいと「アルカリ性」です。中性洗剤は付着から時間が経過していない汚れ全般に効果的。ですから、藤原さんのように中性洗剤でこまめな掃除を心がけるのは理想的です。汚れの重症化も防げます。
藤原 よかった(笑)!
錫村 酸性洗剤は浴室やトイレ用洗剤に多く使われ、水垢や尿石、先ほどお伝えした金属石鹼などに有効です。ただ、浴室のドアに使われるアルミ素材などは、変色する可能性があるので注意が必要。アルカリ性洗剤は洗浄力が強力で、頑固な油汚れや焦げに効く分、皮膚につくと痛みを感じたりするので、ゴム手袋を着用の上、注意して使用することをおすすめします。
油汚れに悩むキッチンでは、焼かれているか否かで使い分けを。
藤原 中性洗剤だけでは対処しづらい場所ごとに、適した洗剤を挙げていきましょうか。まず家の中で掃除の厄介さに直面する場所と言えば、キッチン。油汚れと焦げが悩ましい。
錫村 特に油汚れが目立つコンロ周りは、〝焼かれているか〟で洗剤を分けるといいです。腰から上、壁パネル、レンジフード、冷蔵庫の上部につくのは「焼かれていない油汚れ」。油を含んだ蒸気が飛んだ、落としやすい汚れなので、ハードな洗剤に頼る必要はありません。僕なら超電水クリーンシュ!シュ!で拭き掃除を勧めますね。油汚れにはアルカリ性洗剤が効くんですが、このクリーナーには非常に純度の高い電解アルカリイオン水が使われているんです。気持ちいいくらいにサッと落ちます。類似品でもたいていの油汚れは落とせますが、仕上げのスッキリ感は他に勝ります。
藤原 私はアルカリ電解水が配合されたシートタイプを使用。雑巾を使う手間をなくし、使い捨てられる楽さを取っています。マツキヨの消臭キッチンクリーナーは界面活性剤不使用なので二度拭きも不要。気になる箇所に張りつけて、油汚れが緩んだところで拭き上げる作業を、週に数度繰り返します。
錫村 調理を終えた直後の熱いフライパンに電解アルカリイオン水をシュッと吹きかけると、ジュッと音がして一気に油が落としやすくなりますよ。汚れは熱が加わると洗剤により反応しやすくなることも覚えておくといいでしょう。
藤原 〝焼かれた〟焦げについてはどうですか? 私は「焦げでお腹は壊さない」と考えてある程度は許容する派。目立ってきたら、カネヨの赤丸クレンザーと金属タワシでやれるところまで擦り落とし、落ちなかったら諦めています。クリームクレンザーは汚れを浮かせるための界面活性剤が入っているので、研磨材量が少なめ。個人的には焦げに研磨材がしっかりアタックする粉末クレンザーを使うことが多いです。
錫村 重度の焦げは擦る労力を省くため、THE POWERを使います。ジェルタイプで、五徳やグリルの焦げに吸着させたら、後はジェルごと剥がすだけです。焦げ落としは難易度が高く、本気で落とそうと思うと、強力なアルカリ性洗剤が必要。不可欠なのは苛性ソーダで、THE POWERには必要量がきっちり配合されています。
【キッチン】
◾️油汚れにはアルカリ性洗剤を。電解アルカリイオン水で拭き取れる。
◾️軽い焦げは粉末クレンザーで。粒をダイレクトに焦げにあてて擦って。
◾️グリルや五徳の炭化した油汚れを擦って落とすのは、プロでも難しい。専用の強力ジェルで湿らせてオフ。
【こまめに落とす派】
「アルカリ電解水を配合したシート。枚数が多く乾きにくいので使いやすい」(藤原さん)。
「これにタワシがあれば、多少の焦げなら解決できます」(藤原さん)。
【一気に落とす派】
「汚れの細部に沁み込んで油分を溶解し、タンパク質を分解。軽く擦るだけで落ちる」(錫村さん)。
「ジェルで焦げをふやかして剥がす。鉄、ステンレス、ホウロウに」(錫村さん)。
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