演劇界に衝撃を与えた段田安則と演出家の舞台が再び。 『リア王』』
撮影・小川朋央 ヘア&メイク・藤原羊二(UM) スタイリング・中川原寛(CaNN) 文・佐藤博之
自分なりの、ショーンなりのリア王を創ります。
段田安則に芸術選奨文部科学大臣賞と読売演劇大賞最優秀男優賞をもたらした演出家ショーン・ホームズとの最強タッグが2年ぶりに帰ってきます。ショーンが選んだのは、シェイクスピア悲劇の最高峰『リア王』だ。
「(ホームズ氏に)シェイクスピアでやりたいものはありますか? と聞かれたとき、『ロミオかな』と冗談で返したら、『ジュリエットでもいいですよ』と(笑)。フタを開けたら『キング・リア』でした。わかりました、と気軽に考えていたのですが、こんな大役、本当に私で大丈夫? という思いのいっぽう、昨年末から膨大なセリフとの格闘を続けています」
大竹しのぶさんと共演した『女の一生』では、演出も手がけた段田さん。『セールスマンの死』のときのショーンの演出の印象を聞くと、
「『セールスマンの死』のラストシーンで、冷蔵庫の中に入って死ぬという発想は自分にはなかった。そういう思いつかないような演出をされると、これこそまさに演出家の仕事なんだな、と思い知らされました。彼はシェイクスピアの本場、英国の人ですからね。今回のリア王も現代に移し替えた設定ということで、どんな展開になるのか僕も楽しみなんです」
稽古中は、自分より若い役者から刺激を受け、学ぶ点もあると話す。
「『セールスマンの死』の稽古では、長男役の福士誠治さんの芝居を見て、これだとつかんだことがあります。相手の感情がどうも台詞だけではしっくりこない。相手が発する台詞でこの感情になるのかと発見したりね。それがお互い見つかると芝居が楽しくなります」
今回の『リア王』は台本を読んだ限り、意外と喜劇っぽい、と笑う。
「親バカですし、悪い娘2人に振り回されている、それも喜劇っぽいし。人間の愚かしいところ、そういうところが面白いと思います。劇中に、リア王がだんだん気が変になっていく描写があるんですが、嵐の中『風よ吹け』と叫ぶシーンは見せ場かもしれない。こういう役は今回が初めてなんですが、果たして本当におかしくなっているのか、どうなのか。最初のシーンで末娘のコーディリアに好かれていると思っていたら、そっけない返事をされて、あれ? と父親役の自分がガクッとして物語が始まるんですけど、その最初の掛け合いも楽しんでほしいです」
リア王ではないが、段田さんも近年〝終活〟を考えるようになったそうで、
「同級生が最近、亡くなることが増えたんです。そうすると、やっぱり残り時間のことを考えてしまいますね。あと何本の舞台に立てるのだろうか、とか、財産があるわけじゃないんですが、早いうちに遺言を書いておいたほうがいいのかな、とか」
最後に〝みなさんの期待を裏切らないリア王をつとめたいです〟と意気込みを語ってくれた。
PARCO PRODUCE 2024
『リア王』
『クロワッサン』1112号より