松坂桃李さん、「『ゆとり』の現場は安心感がありました。」【今会いたい男】
素顔は、広く全体を見渡せる気遣いの人でした。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) スタイリング・丸山 晃 ヘア&メイク・Emiy 文・黒瀬朋子
「心を許せる同世代の仲間と共に歩んでいる感覚があります。」
極限まで追い詰められる男を演じたかと思えば、お調子者の二世議員を飄々と体現。超シリアスからコメディまで、松坂桃李さんの出演作の振り幅はとても広い。しかも、どの物語の色にも、少しの濁りもなく染まれるのはなぜなのだろう。
「自分がどう見られるかに頓着がないから、かもしれません。自分の役がどうこうよりも、作品全体を面白くすることのほうに興味が向きます」
「この役が面白かった」という褒め言葉も、俳優が際立って見えてしまうのは作品として成功しているのだろうかと疑問視する。常に全体のことを考え、エゴを押しつけない。取材中も一貫して、相手に委ねるような優しい語り口だった。
そんな松坂さんの最新作は『ゆとりですがなにか インターナショナル』。現代社会に揉まれる、ゆとり世代の奮闘を描いた宮藤官九郎さん脚本の作品が、連続ドラマから7年を経て映画化された。
「撮影では毎回、これ以上何も出ないというくらい全力を出し切るので、同じ役を再び演じるというのは、果たしてできるだろうかと緊張します。でも、『ゆとり』の現場は安心感があって、あっという間に当時の感覚に戻れました。時代も環境も大きく変わっているのに、30半ばになった山路(役名)は全然変わってなくて相変わらず拗らせていました(笑)」
本作での岡田将生さん、柳楽優弥さんとの掛け合いは絶品。共演を介して、かけがえのない友人になった。
「岡田、柳楽の優ちゃん、(安藤)サクラさんら、心を許せる同世代の仲間と肩を組み横一列になって歩みを進めている感覚があります。みんなの活躍にいつも刺激をもらいますし、熱のある貴重な関係は、ずっと大事に持っていたいなと思います」
松坂さんに理想の大人像について聞いてみると、最近共演した大先輩の名前が挙がった。
「役所広司さん、堺雅人さん、阿部寛さん、二宮和也さん……皆さんかっこいい上に子ども心を持っていて、とてもチャーミングなんです。撮影の合間に談笑しているときも茶目っ気たっぷり。それが役の幅につながっているようで素敵でした」
人に対しても作品に対しても、信頼し委ねる素直さが、何者にもなれる松坂さんの武器に違いない。
『クロワッサン』1103号より