極限まで追い詰められる男を演じたかと思えば、お調子者の二世議員を飄々と体現。超シリアスからコメディまで、松坂桃李さんの出演作の振り幅はとても広い。しかも、どの物語の色にも、少しの濁りもなく染まれるのはなぜなのだろう。
「自分がどう見られるかに頓着がないから、かもしれません。自分の役がどうこうよりも、作品全体を面白くすることのほうに興味が向きます」
「この役が面白かった」という褒め言葉も、俳優が際立って見えてしまうのは作品として成功しているのだろうかと疑問視する。常に全体のことを考え、エゴを押しつけない。取材中も一貫して、相手に委ねるような優しい語り口だった。
そんな松坂さんの最新作は『ゆとりですがなにか インターナショナル』。現代社会に揉まれる、ゆとり世代の奮闘を描いた宮藤官九郎さん脚本の作品が、連続ドラマから7年を経て映画化された。
「撮影では毎回、これ以上何も出ないというくらい全力を出し切るので、同じ役を再び演じるというのは、果たしてできるだろうかと緊張します。でも、『ゆとり』の現場は安心感があって、あっという間に当時の感覚に戻れました。時代も環境も大きく変わっているのに、30半ばになった山路(役名)は全然変わってなくて相変わらず拗らせていました(笑)」