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SNS映え必至の”あんこのお花”づくりに、スイーツ芸人・スイーツなかのさんが挑戦。

和菓子の進化のひとつ、いわゆる〝SNS映え〟。
とりわけ、手作りできるあんこのお花のデコレーションは人気急上昇中。

撮影・小林キユウ 文・三浦天紗子

お持たせやパーティーテーブルが盛り上がるので、喜ばれますよ。(「和はなアート フード協会」代表 末廣由香里さん ・左)こんなキレイなデコが、自分でもできるなんて素晴らスィーツ!(スイーツ芸人 スイーツなかのさん ・右)
お持たせやパーティーテーブルが盛り上がるので、喜ばれますよ。(「和はなアート フード協会」代表 末廣由香里さん ・左)こんなキレイなデコが、自分でもできるなんて素晴らスィーツ!(スイーツ芸人 スイーツなかのさん ・右)

さまざまなSNSで、美味しいスイーツ情報を発信し、人気を博しているスイーツなかのさん。あんこを使い、映えスイーツにするお花のデコレーションを教えている末廣由香里さん。なかのさんが、末廣さんに弟子入りし、〝あんこのお花〟に挑戦です。

スイーツなかのさん(以下、なかの) あんこのお花を、僕はInstagramとかで見ていて、ハマっている友人もいて、自分でもこれができたらめっちゃいいなと思っていたんですよね。それで今回『体験してみませんか』というお話をいただいたので、本当に楽しみにしていました!

末廣由香里さん(以下、末廣) スイーツに詳しい方が注目していてくださったなんてうれしいです。今日はどうぞよろしくお願いします。

なかの パティシエさんにケーキ作りやデコレーションを教わる番組などにも何度か出たことあるんですよね。絵的に、僕がちょっと失敗するのを求められているわけですが、不器用なので普通に失敗したりします(笑)。先生の作品を見せていただくと、難しそうでなんかできる気がしない……。

「あんこのお花」が巷でブーム!

白あんにお茶や野菜など自然素材のパウダーを練り込んで作った、カラフルなあんクリーム。それをしぼり出して花や葉の形に仕上げた「あんこのお花」。見て美しく、食べて美味しいと、人気を博している。

ホールケーキの上に、バラを中心としたあんこのお花を飾ると一気に華やかに。色で印象を変えることも。
ホールケーキの上に、バラを中心としたあんこのお花を飾ると一気に華やかに。色で印象を変えることも。
レッスンでも毎回好評の「おはぎボックス」。箱の中におはぎの種を敷き詰め、上にあんこのお花を飾る。
レッスンでも毎回好評の「おはぎボックス」。箱の中におはぎの種を敷き詰め、上にあんこのお花を飾る。

流派はいくつかあるが、末廣さんが理事を務める「和はなアートフード協会」では、乳製品を使わないレシピが中心。

末廣 体験にいらして、手先に自信がないとおっしゃる方はけっこういらっしゃいますよ。それでも何度か練習するうちに上達していくので、なかのさんもがんばってください。

なかの 先生があんこのお花に惹かれて今のようなお仕事を始められたきっかけは何ですか。以前は航空会社にお勤めだったと聞きました。

末廣 はい、キャビンアテンダントでした。妊娠がきっかけで産休に入り、夫の仕事の関係もあって、私が育児の中心になるしかなかったんですよね。家でできることが何かないかなと探しているときに、あんこで作った食べられるお花のデコレーションが韓国でブレイクしていると知ったんです。

なかの もともとお菓子作りは得意だったんですか。

末廣 たまに作ったりはしましたが、実は私は辛党で、甘いものはそんなに食べていなかったんです。でも、プリザーブドフラワーのお仕事にも興味があったほど花が好きなので、あんこのお花の可愛さに夢中になってしまった。家でできるし「これだ!」と、けっこう気軽な気持ちで始めてしまいました。
「ソルギ」ってわかりますか。韓国のフラワーケーキの土台には、米粉を蒸したソルギが使われることが多いのですが、日本人にあまりなじみがないため、ピンとこない人が多く、ハードルが高いんですよね。でも日本人なら、お団子やおはぎなど伝統の和菓子があります。それをデコレーションすればいいのではと思いつきました。お花しぼりは、日本で少し習ったことがありますが、ほとんど独学ですね。

なかの もしかして韓国まで習いに行ったのかな、と思ってました。

末廣 なかのさんは、いつからスイーツ芸人を始められたんですか。

なかの 僕は今、芸歴13年目なんですが、スイーツの仕事をしてるのは9年ちょっとですかね。組んでいたコンビが解散して、次の相方を探すまでピン芸人として舞台に出るとなったとき、自分に何も取り柄というか、売りがないなと気づいて。
ならば、自分の好きなものを深掘りしてネタにできないかなと思ったんです。学生の時からお菓子屋さんやカフェなどの食べ歩きが好きで、他の芸人さんよりもお店には詳しいと思ったので、スイーツ芸人を名乗ることにしました。

乳製品などの脂肪分なし。自然志向で健康的なお菓子。

末廣 特に好きなお菓子とかありますか。せっかくなので、何かおすすめのお菓子を教えていただこうかな。

なかの 和洋両方好きですが、焼き菓子は昔から好きですね。最近は、東京・西荻窪の『オカシヤカルフ』さんの〈レモンケーキ〉がおすすめです。
末廣さんはお酒がお好きということで、以前、稲垣吾郎さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組で紹介した『wagashi asobi』さんの〈ドライフルーツの羊羹〉はどうでしょうか。吾郎さんは甘いものをあまり召し上がらなかったのですが、放送後にご自身で足を運んで購入されたというほど気に入ってくださったんです。その羊羹を薄くスライスして、クリームチーズを塗ったバゲットにのせていただくと、お酒にも合うと思います。

末廣 それ美味しそう! 今度、買いに行きます。

なかの そういえば『クロワッサン』で紹介されていた富山県の『五郎丸屋』さんの〈きせつのさがしもの〉も、カクテルをベースにした琥珀糖なので、末廣さんが気に入りそうです。見た目もすごくキレイで、美味しいし、あんこのお花に通じるところがありますよね。

末廣 ありがとうございます。では、そろそろレッスンを始めていきましょうか。

なかの 使う白あんは特別なものなんですか。先生が用意してくださったのはホントに白いですよね。クリームか何かを混ぜるんですか。

末廣 製菓材料店で買える普通の白あんでいいのですが、メーカーによって柔らかさや元の色が違うので、自分が扱いやすいものを見つけるのがポイントですね。ハンドミキサーなどで攪拌して空気を含ませると、このくらいまで白っぽくなるんですよ。これにプラントベースのフードパウダーを混ぜて、色をアレンジしていきます。

なかの フードパウダーって食べもの由来の着色料ですよね。どんなものがあるんですか。

末廣 かぼちゃやビーツなどの野菜類、抹茶やココアなどの飲料類、あと、クチナシなどの花類などですね。

なかの 色の濃淡もこんなにいろいろできるんですね。どんなふうに変えたらいいんですか。

末廣 パウダーを多く混ぜるほど色は濃くなるので、自分の作りたい感じに調節してください。

なかの わかりました。

末廣 今日の手順を説明しますね。初心者でも比較的簡単な、カーネーションとアジサイを作ります。
カーネーションのピンクはビーツパウダーを使用。アジサイはバタフライピーと紫芋がマーブルになるように使います。
基本の道具はボウルとゴムべら、花を作るしぼり袋、口金。フラワーネイルはお花しぼりやシュガークラフトの土台にするもので、単にネイルと呼ぶことも。花しぼりの練習をしたら、カップケーキの上に直接のせて飾りつけていきましょう。

【あんこのお花を 作ってみよう。(1)】基本の道具と材料:しぼり袋、口金(洋菓子用)、台のフラワーネイル、白あん、紅芋やデーツのパウダー。製菓材料の専門店などで入手可能。
【あんこのお花を 作ってみよう。(1)】基本の道具と材料:しぼり袋、口金(洋菓子用)、台のフラワーネイル、白あん、紅芋やデーツのパウダー。製菓材料の専門店などで入手可能。

口金次第で雰囲気が一変。バリエーションも魅力。

なかの まずは、しぼり袋にあんをセットするんですよね。

末廣 ゴムべらで拳1つ分くらいをすくって、しぼり袋のなるべく先端に入れるようにしてください。キレイな花を作るには、持ち方が肝心なんです。基本的には、そのしぼり袋を持った手首を、上下させる動きしかしないんですよ。その間に左手はネイルを反時計回りに動かしていきます。まずは左右の手を同時に使う感覚に慣れてください。

なかの あんをしぼり出しながら、フラワーネイルを回すんですね。これは相当難しい!

【あんこのお花を 作ってみよう。(2)】しぼり袋にあんを入れて、台にしぼる。花びらが重なるように置くと立体感が出て花の美しさが増す。
【あんこのお花を 作ってみよう。(2)】しぼり袋にあんを入れて、台にしぼる。花びらが重なるように置くと立体感が出て花の美しさが増す。

末廣 まず、フリフリした花びらが可愛いカーネーションを練習してみましょうか。右手だけでなく忘れずに、左手も動かしてくださいね。

【あんこのお花を 作ってみよう。(3)】「袋の持ち方が肝心」(末廣さん) 「しぼる角度難しい」(なかのさん) カーネーションの花を練習中のなかのさん。台を回しながら手首のスナップを小刻みに利かせてしぼる。ちょっとコツがいりそう。
【あんこのお花を 作ってみよう。(3)】「袋の持ち方が肝心」(末廣さん) 「しぼる角度難しい」(なかのさん) カーネーションの花を練習中のなかのさん。台を回しながら手首のスナップを小刻みに利かせてしぼる。ちょっとコツがいりそう。

なかの わあ、絶対これ難関だ。

末廣 まだ左右の動作の速度や力加減が合っていないからかも。これだけで1週間以上かかるのは普通ですから、初体験としては相当いいですよ。

なかの 「奇跡的にそれっぽくなった」というだけです。コツがわかった実感は全然ないです……。

【あんこのお花を 作ってみよう。(4)】アジサイはネイルを回さないでできる。「中央にあんの土台を作り、周りに花を一つ一つスタンプしていくイメージで」(末廣さん)
【あんこのお花を 作ってみよう。(4)】アジサイはネイルを回さないでできる。「中央にあんの土台を作り、周りに花を一つ一つスタンプしていくイメージで」(末廣さん)

末廣 口金が浮くとたくさん出てしまうので、出す量を調節しながら素早い動きで。2段目、3段目と重ねて、トップのあたりは口金を垂直に立てて、いろんな角度でのせてください。うん、立体感が出てる。上手です。

なかの 先生のお手本はすごいキレイだけど、僕のは寿司屋のガリみたいになってませんか(笑)。全体に言えることですけど、あんを均等に出し続けるのは本当に難しいです。

末廣 生徒さんもみんなそこに苦戦してますからね(笑)。でもなかのさんは筋がいいですよ。花びらの段が重なったら、すごくお花らしくなってきました。本当に感心しました。

【あんこのお花を 作ってみよう。(5)】「上達するには?」(なかのさん)「練習あるのみです」(末廣さん) 練習を終え、着色したあんを使っていよいよ本番! 合わせる色は植物由来のナチュラルなパウダーを使用。
【あんこのお花を 作ってみよう。(5)】「上達するには?」(なかのさん)「練習あるのみです」(末廣さん) 練習を終え、着色したあんを使っていよいよ本番! 合わせる色は植物由来のナチュラルなパウダーを使用。

なかの 芸人って基本、いじられてナンボだから、ふだんはツッコまれてばかりで。こんなに褒めてもらえる優しい世界があったんですね。ちなみに、どんな方があんこのお花に興味を持って、体験講座やレッスンにいらっしゃるんでしょうか。

末廣 私は最初、自分みたいな境遇の方が来てくださるのかなと思っていたんです。仕事を辞めざるを得なくなって、だけど何かやりたいと思っているような子育て世代の方たちですね。ところがお教室を始めたら、意外に子育てが一段落した世代の方も多くいらっしゃいます。生徒様ではありますが先輩ママとしていろいろなことを教えてくださり、とても助けられています。

なかの 新しいデザインはどんなふうに開発するのですか。

末廣 本物のお花をひたすら観察しますね。どうリアルに近づけるか。何百種類と口金があるので、トライ&エラーの繰り返しです。これは生徒さんもみなさん言うんですが、お花屋さんに行くと、「これは作れそう、あれは難しそう」と、あんこのお花にできるかできないかが基準になってる(笑)。

なかの 面白い(笑)。

花屋さんの店頭で、全てがあんこに見えます。
花屋さんの店頭で、全てがあんこに見えます。

末廣 それに、バラひとつ取っても、口金を替えるだけでお花の感じが変わるんです。それが楽しい。

なかの 実際に体験して、あらためてすごさを感じました。しぼっているときに集中して、無になれるのもいい。

末廣 私も、気づいたら3時間4時間経っていたとかざらですね。

なかの 一度体験したら、ハマる人は多そう。僕もまたやってみたいです。

末廣 先日はかき氷屋さんとあんこのお花をコラボする企画がありました。もっといろいろな方に楽しんでもらいたいなと思っています。

しぼっている最中は無になれるのがいいですね。
しぼっている最中は無になれるのがいいですね。

●スイーツなかのさん作・あんこのカーネーション。

「これは難しい……!」と唸りつつなかのさんが作り上げた作品。しかしどうして、リアルな立体感のある仕上がりに末廣さんも大絶賛。
「これは難しい……!」と唸りつつなかのさんが作り上げた作品。しかしどうして、リアルな立体感のある仕上がりに末廣さんも大絶賛。

●あんこの紫陽花。マーブル模様が美しい。

こちらもなかのさん作。青と紫を同じしぼり袋に入れ、一つ一つ花を咲かせるように埋めながら作る。色がランダムに混ざる感じを楽しむ。
こちらもなかのさん作。青と紫を同じしぼり袋に入れ、一つ一つ花を咲かせるように埋めながら作る。色がランダムに混ざる感じを楽しむ。
  • スイーツなかの

    スイーツなかの さん

    スイーツ芸人

    東京都出身。早稲田大学卒業後、芸人の道へ。スイーツの催事企画や商品開発の監修、コンクール審査員等で広く活躍。パンケーキハットがトレードマーク。

  • 末廣由香里

    末廣由香里 さん (すえひろ・ゆかり)

    「和はなアート フード協会」代表

    埼玉県出身。「あんこのお花」教室を開業。2021年に「和はなアートフード協会」を設立、理事に。著書に『あんこのお花練習帖』。

『クロワッサン』1096号より

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