介護施設への入居、どんな選択肢があるの?
文・ 殿井悠子 イラスト・古谷充子
身体や介護の状態により住み替えを意識しましょう。
介護を考えるとき、いずれは施設やホームに入居することも考えておきたい。
突然必要に迫られると選択が狭まる可能性が高いので、親が元気なうちに話題に出しておこう。「縁起でもない!」と言われたとしても、その奥にある気持ちを聞くきっかけになるだろう。
実際、介護をする家族が病気になる、要介護度が高くなって在宅での介護が難しくなることは珍しくない。そんなとき、できるだけ快適に過ごせる場所に「住み替える」と考えてはどうだろうか。
高齢者の住居や介護施設には多くの種類があり、呼び方も多様。大きく分けて、介護認定を受けて入居するものと、将来的な日常生活に不安がある場合に入居するものがあり、公的施設と民間施設がある。
●高齢者用の住居・介護施設の種類
【公的施設】
【民間施設】
【親目線&子目線で今から準備を。ケア付きのすまいを考える。】
どう暮らしたいか、親に聞いてみましょう。
「介護が必要になったら施設へ」というのは自分の考えだと認識しよう。親がどう思っているのか、聞いてみることが大事だ。
「地元から離れたくない」「お芝居を見たいから都会がいい」「終(つい)の住処(すみか)として住みたい地がある」、なんて言葉が飛び出すかもしれない。
実現は難しいとしても、できるだけ希望に近い暮らしを考え、話し合う中で、現実的な“落とし所”を見つけていくことになるのでは。
親の考えを尊重することで本音や思いが出てくるだろう。
気になる施設は5カ所以上、見学してみましょう。
気になる施設やホームがあれば資料を取り寄せ、ホームページをチェックしよう。
いいなと思った所へは、親といっしょに見学へ行こう。1、2カ所では違いがわからないので、5カ所くらいは見学したい。
そして、親が元気なうちに体験宿泊を。待ったなしの切迫した状態になると、冷静な目で判断できない可能性があるからだ。
SNSが使えるように今からサポートしましょう。
新型コロナで介護施設の面会が中止された際、家族とのコミュニケーションで役立ったのがLINEなどの動画通話サービスだ。
親にスマートフォンの使い方を教えて、今から活用を。離れて暮らしていても、お互いの顔を見れば安心できるし、親の顔色や会話のチェックもできる。
孫とのLINEや通話、写真を撮って送るなど、楽しみながら頭や手を使う機会も増える。また、施設に入居した際には、スマホは親子のホットラインになる。親の話を録音したり、気になることがあれば親が録音や動画で記録を残すこともできるのだ。
親の介護は自分の予行演習と考えましょう。
親の介護について、今は不安に思っているかもしれないが、それはやがて自分の身にも起こること。
「将来、自分に介護が必要になったときにどうしたいか?」と考え、今、そのための学びと予行演習をしていると捉えてはどうだろう。また、友人の介護経験者や介護従事者に話を聞いてみるのも、きっと参考になるだろう。
「自分の親だから大事にしなくてはいけない」という思いや愛情だけでは、介護が続かなくなったときにつらくなる。自分ひとりで抱えるのではなく、介護保険制度を上手に活用し、プロの力を借り、周りの知恵を取り入れて、肩肘張らずに柔軟に考えよう。
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