ペット店で猫を買う人の10人に1人が保護猫を選べば、全ての命が助かるのです。
撮影・中村ナリコ イラストレーション・オカタオカ 文・篠崎恵美子
ビルの4階にある『ネコリパブリック 東京お茶の水店』。手と足裏を消毒して中に上がると、畳敷きの広い部屋には思い思いの場所でくつろぐ何匹もの猫たちがいた。午後のせいかまどろんでいる猫が多いが、おもちゃをくわえて「遊ぼう!」と寄ってくる猫も。
「ここは保護された猫だけの“保護猫カフェ”です。条件が合えば猫を引き取ることができますよ」
と、店長の内川絢子さん。
猫は常時25匹前後いるが、保護された経緯はさまざまだという。
「提携している保護団体がいくつかありまして、そこからお預かりしている状態です。保健所から引き取った猫もいますし、多頭飼育崩壊の現場から助け出した猫もいます」
どの猫も去勢や避妊の手術、ワクチン接種、猫白血病などの検査、駆虫を済ませている。保護した当初は猫風邪を引いて目や鼻がグシュグシュしていた子たちも、獣医さんで適切な処置をしてもらい、安全で清潔な部屋の中で、栄養たっぷりのフードを食べているうちに毛並みもきれいになっていく。
「保護団体で人慣れさせてから来ている猫が多いです。まだ警戒心の強い猫もいますが、ほかの猫たちが人と触れ合ったり遊んだりしているのを見て、あ、ニンゲンてそんなに悪くないんだ、と少しずつ人との距離を縮めていくんですよ」
毎月10匹ほどの猫の里親が決まって、新しい家族の一員となる。
「里親になっていただく方にはいろいろな条件がありますが、まず完全に室内飼いをしてくれる人。じつは交通事故で亡くなってしまう猫の数はものすごく多いんです」。
不注意から猫を外に出してしまい、行方不明ということは絶対避けたい。
ネコリパブリックから猫を引き取るメリットはありますか?
「飼う方と猫との相性のミスマッチが少なく済むと思います。猫ってとても個性的な生き物で1匹ずつ全然性格が違うので、日頃から観察している私たちは、その方に合いそうな猫をおすすめできます」
初めて猫を飼う人が子猫が欲しいと言う場合、子猫は野獣のようですよ、と説明する。
カーテンをよじ登ったり、高いところからドン! と降りてきたり、かなり乱暴で活発な時期がある。それを知らずにかわいいからと飼ってしまうと、大変なことになるからだ。
「家を空けている時間が長い人がべったりと甘えん坊の猫と暮らすと、留守番がイヤで粗相をしたり、いたずらをしたり問題行動を起こすこともあります。また先住猫がいる場合、ほかの猫と仲良くしたがらない性格の猫はおすすめしません。
こういった猫の性質を知らずにペットショップなどで買った場合、猫がこんなに大変な動物だとは思わなかったと放棄してしまうケースが多いんです」
ペットショップで猫を買う人の10人に1人が保健所から猫を引き取れば、全ての猫の命が助かる、と内川さん。
「動物を飼いたいと思ったときに、今家族を待っている子たちがいることを思い出してもらえるといいと思います」
保護猫カフェ ネコリパブリック 東京お茶の水店
東京都文京区湯島3・1・9 CRANEビル4階
TEL.03・5826・8920
営業時間:15時〜20時(平日)、11時〜18時(日曜・祝日)、木曜休(祝日の場合は営業)
入店料:平日は30分1,100円(税抜き)、土日祝は30分1,300円(税抜き)。
完全予約制。https://www.neco-republic.jp
東京メトロ・丸ノ内線御茶ノ水駅より徒歩10分、千代田線湯島駅より徒歩6分。
『クロワッサン』1056号より