【森山良子さん・「おぎやはぎ」小木博明さん対談】母娘も義親子も不思議な縁で結ばれて。どこの家とも違う、うちの距離感。
撮影・青木和義 文・室田元美
タイプの違うクレイジー同士が 出会っちゃったのよねぇ。(森山さん)
森山良子さんは5年ほど前に、自宅を二世帯住居に改装。同居する娘(奈歩さん)の夫で、義理の息子、お笑いコンビ「おぎやはぎ」の小木博明さんとは、ふだんから一緒に夕食を楽しむ仲。しかも実の親子以上に、何でも言い合える関係だとか。
森山良子さん(以下、森山) 今じゃ毎日のようにドア開けて、こんにちは〜って。だけど初めてオギに会った時は、家に帰ったら知らない男子がソファに寝てて、おかえりなさーいって。
小木博明さん(以下、小木) そうでしたね。第一印象はよくなかったですね。
森山 私が「あ、いらっしゃい」って言っても、「あ、どうも」って、寝そべったままスマホいじってて。失礼だな、って思ったのよ。
小木 つきあってる彼女の母が良子さんとは知らず、「やべ、彼女のお母さん、森山良子だった」と友だちにメールしてた(笑)。ただ、そこで媚びるのはイヤじゃないですか。
森山 でも紅茶を淹れたら「ああ、これいいにおいだな」ってちゃんと言ってくれて。意外といい子かもと思った。
小木 最初に許されたからずっと甘えてるんです。息子(森山直太朗さん)のトレパンも勝手に穿いちゃって。
ミュージシャン一家に飛び込んで感じた、「違和感」のあれこれ。
ーーところで小木さんは、ミュージシャン一家の森山家にたじろぎませんでしたか?
小木 ミュージシャンってすごいですね。クレイジーっていうか。直太朗のバースデーパーティに良子さんが乱入して直太朗と向かい合って歌うんですよ。ちょっとヘンなんです。ドン引きです。ぼくなんて、この人たちに比べるとマトモだなあと思いますよ。
森山 私たちにとって歌はメッセージと同じ、言葉なのよ。仲間と会えば挨拶は「イエ〜イ!」。で、ハグ!
小木 とくに良子さん世代のミュージシャンってネジが外れてますよね。
森山 昔はね……、朝まで飲んでそのままステージっていう生活だったからね。家にいつも仲間が出入りしていて。今の人のほうがまじめよね。オギも仕事では相当クレイジーだけど、終わったらまっすぐ家に帰る。まったく汚れてないものね。
小木 ぼく、酒飲まないせいもありますけどね。ところで良子さんにお願いなんだけど、練習熱心なのは尊敬しますが、夜中の発声練習はやめてくださいよ。壁の向こうから「うおおおお〜」ってうなり声、あれ怖いですよ(笑)。防音室があるんですから、そこに入ってやってくださいよ。
森山 そうなの? ごめん。ついテレビ観ている時なんかに、発作的に声を出したくなるのよ。「うぉっほ」 「あああーっ」とか。知らない人が聞くとびっくりするわよね。
仲良しでも心の「休肝日」は必要! 会わない時間がいい関係を作る。
ーー義親子の関係って難しそうですが、うまくやっていくコツはありますか?
森山 私は血がつながっているかなんて、まったく気にならない。オギといるとなごめるというか、心を許せる存在よ。私たち、けっこう合うよね。
小木 森山家はよく議論するんですよ。で、妻も直太朗も良子さんに厳しいんです。そこまで言う?って。うちの家族はなぜか穏やかでケンカもしたことない。ぼく、どうしていいかわからなくて黙って抱っこした犬を撫でてますよ。
森山 アハハ、そうなの? オギは本当は繊細で優しいのよね。
小木 激しくやり合うのも仲がいい証拠ですよ。でも妻が手厳しいと、良子さんがんばれ、って味方したくなる。
森山 オギは人に気を使わせない特殊技能を持ってる。母が介護施設に入っていた時も、子どもを連れて会いに行ってくれたり。自分のご両親も大事にしているし、信頼できる人なのよ。
小木 ありがとうございます。
森山 昔から「嫁いびり」とか言うじゃない。信じられないわよ。自分の娘や息子が愛している人に、なんでそんなことができるのかしら。
小木 うちは12歳の娘も良子さんを「ドコタン」て呼んで入り浸ってます。
森山 孫のお友だちとも仲良しだしね。
小木 でもぼくたち、週2回ほど会わない日がありますよね。それが「休肝日」みたいでいいのかも。実の親でもずっと一緒だとイライラして、帰り道で「あんなこと言わなきゃよかった」って後悔するんですよね。
森山 心の休肝日ね。あとは個性を尊重する。違ってあたりまえだもん。
小木 お互いクレイジーですから。ぼくのほうがずっとましですけどね。
『クロワッサン』1050号より