くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】忘れたい知り合いが芸能人になりました。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回はかつての知り合いが芸能人になり見るたび昔を思い出してしまう方からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>

山田ルイ53世さん、はじめまして。
どうか私の長年の悩みを聞いてください。
学生時代に私をいじめていた人が、芸能人になりました。詳細は伏せますが、TVや広告などを通して彼女の顔や声、幸せな私生活の様子などが嫌でも耳に入ってきます。私は彼女の顔を見るたび、辛くて、悲しくて、憎くてたまらなくなります。
一方の私は、紆余曲折ありながらも名門大学から一流企業に進み、幸いにも家族や良い友人に恵まれ、それなりに満足といえる人生を送ってきました。
私はもう、彼女への憎しみを手放したいのです。彼女の存在を避けがたいこの社会で、心乱されずに平穏に生きていくにはどうしたら良いのか、どうかお知恵をお貸しください。

(あざらし/女性/メーカーで総合職OLとして働く20代です。読書と旅行が生きがいです。)

山田ルイ53世さんの回答

“端くれ”とは言え、一応芸能人である筆者に、このお悩みをブツけてくる編集者を恨みつつ本題へ。
学生時代、あざらしさんをイジメていた相手が、芸能人になったとのこと。
しかも、TVや広告で“露出”があり、「幸せな私生活の様子が嫌でも耳に入ってくる」、「彼女の存在を避けがたいこの社会」とまで仰るのですから、かなりの“売れっ子”の方なのでしょう。
これは確かに、しんどい。
「辛い」「悲しい」「憎い」という心中、お察しします。
相談者は、そういう気持ちを「もう手放したい」とも仰っていますが、
「紆余曲折はあったが、“名門”大学から“一流”企業に進み、幸いにも家族や良い友人に恵まれ、それなりに満足といえる人生を送ってきた」
と綴らずにはいられない(嫌な言い方で申し訳ない)ところをみると、
「……私だって!」
と未だ彼女に対する想い(ハッキリ言えば恨み、でしょうが)は根深そうです。
いや、当然のこと。
(言葉によるものも含め)イジメは「暴行」、もっと明確に「犯罪である」と認識した方が良いと筆者は思っていますので、被害者である相談者には恨み続ける権利がある。
ただ一方で、義務はないと思うのです。

諸々端折って結論を言うと、忘れるのがベストかなと。
とかく、“忘れる”という選択は、「逃げ」とか「負け」とみなされがち(思いがち)ですが、そもそも、「人と比べてどうこう」という思考は、“イジメられた”とか“出し抜かれた”といった因縁のあるなしに関わず、大抵の場合人生の効率を悪くするように思うのです。
結局のところ、「自分のことに集中する!」という至極単純な姿勢が、“人生のコストパフォーマンス”を最大化出来る唯一の方法だと筆者は考えます。
何かに“囚われる”というのは、わき見運転と同じ。
危険です。

とは言え、腹の虫がおさまらぬ、ということもあるでしょう。
もし、どうしてもということであれば、メールの宛先を『クロワッサン』ではなく紀尾井町方面にある編集部へ変えるのも、アリかもしれません。
全くお勧めはしませんが。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
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