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『みんなのアムステルダム国立美術館へ』│ 金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

美術館の裏側が暴かれるすったもんだの大改修!

『みんなのアムステルダム国立美術館へ』│ 金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

「嫉妬することが、やりたいこと」だという。たとえばわたしはサッカーやギターがうまい人に憧れるけど嫉妬はしない。センスのいい絵本なんか見ると、じわじわと嫉妬心が滲み出る。それから長期取材もの。おもしろい素材を、金に糸目をつけず長期密着したドキュメンタリー映画や番組や書物に出会うと嬉しくなる。と同時にジーッと嫉妬深い目付きになってしまう……。

さて今回は、オランダ・アムステルダムにある国立美術館を舞台にした映画を拝見。ここはルーブル美術館や大英博物館と並ぶ世界屈指の由緒ある美術館で、レンブラントの「夜警」やフェルメール「牛乳を注ぐ女」など教科書でおなじみの名画をわんさか所蔵している。’04年から5年間の予定で始まった大規模改修工事は、揉めに揉め、行きつ戻りつ、結局10年の歳月を要する羽目に。その一部始終を追った映画は、普段目にすることのない美術館の裏側を伝えて興味が尽きない。

美術品を偏愛する学芸員、膨大な収蔵品の整理術、丁寧無比な修復作業……。しかしカメラはすてきなシーンばかり追っているわけではない。一度決まったデザイン案が市民の反対で覆される、美術オークションで入札に失敗する、対立する、出世争いする、会議で居眠りする……なんてところまでちゃーんと撮っている。

10年間徹底的に密着した監督に大拍手。と同時に、これは嫉妬しちゃう案件だなぁ。で、最後に気づく。映像美と人間味が詰まったこの映画もまたひとつの「美術品」なのだと。

『みんなのアムステルダム国立美術館へ』 は2014年制作のオランダ映画(DVDあり)。監督のウケ・ホーヘンダイクは1997年からテレビ用のドキュメンタリー作品を手がけ、本作は撮影に10年をかけて作った。なお、アムステルダム国立美術館はホームページを参照。https://www.rijksmuseum.nl/

金井真紀(かない・まき)●文筆家、イラストレーター。最新刊『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)が発売中。

『クロワッサン』1022号より

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