アポ電、架空請求ほか、最新のお金トラブル、実例と対策。
文・保手濱奈美 イラストレーション・村上テツヤ
多田文明(ただ・ふみあき)さん
●詐欺、悪質商法ジャーナリスト。潜入取材を行うこと100カ所以上。あらゆる詐欺や悪徳商法の手口に精通。著書は『「絶対ダマされない人」ほどダマされる』(講談社)など多数。
“自分は気をつけているので大丈夫”という人もいると思うが、意外と身近に落とし穴があるのがお金のトラブル。
「最も注意したいのは詐欺。息子になりすましてお金をだまし取ろうとする、いわゆる“オレオレ詐欺”がよく知られていますが、ほかにもさまざまな手口があり、時代に即して巧妙に“進化”しています。相手に警戒されれば、それをかいくぐるような新たな手口が出てくるなど、いつ誰がだまされてもおかしくない状況です」(詐欺、悪質商法ジャーナリスト・多田文明さん)
狙われているのは、高齢者だけではない。思いがけず危険な年齢層がある。
「60代以上の人には電話や書面で、30代以下の人にはメールやネットを経由して詐欺を仕掛けてくるケースが多いのですが、その間の40〜50代の人は、電話もメールも使う世代なので、詐欺師もその両方を駆使してくる。つまり、さまざまな詐欺の標的にされる危険性があると言えます。また、詐欺を未然に防げたからといって、油断は禁物。一度、対応してしまうと、詐欺グループの名簿に載ってしまい、手を替え品を替え、繰り返し詐欺がらみの連絡が来るようになるのが、今の傾向です」
だまし取られたお金は、まず戻ってこないと思ったほうがいいという。詐欺以外にも、悪徳商法など、近年のお金のトラブルは多岐にわたる。なかでも顕著な実例を多田さんに挙げてもらったので、お金を守るべく充分注意を。
[ロマンス詐欺]えっ、彼が!? 甘い言葉を信じると……。
恋愛感情にかこつけて、お金をだまし取ろうとする詐欺。狙われるのはおもに女性で、フェイスブックなどSNSに、外国人男性からアプローチのメッセージが届く。相手の男は見た目がよく、ハイスペックだが、それはもちろん偽り。ところが、女性はそうとは気づかないうえに、外国人特有の甘い台詞に心動かされ、一度も会ったことのない相手を恋人や婚約者と認識して、お金を渡してしまうという。だましの手口は、女性に会いに日本に行くから、事前に荷物を受け取ってほしい、と。しかし、その中に金塊が入っていて税関で止められた。税金を立て替えてほしい、など。
[架空請求]身に覚えのない料金を請求される。
「ネットで買った商品の代金が未納」「アダルトサイトに登録したことになっていて、延滞料金がかかっている」などと言って、実際には利用していない料金を、だまし取ろうとする。まずはメールや書面で一報があり、そこに書いてある電話番号に電話をかけてしまうと、たいがい数万円程度のプリペイドカードの購入を促される。従うと、「ほかにも未納が見つかった」と繰り返しだまし取られてしまう。
電話に出た人物はアマゾンなどの大手の会社と偽り、また身に覚えのないアダルトサイトなどは「何らかのウィルスに感染したことが発端かも」などと言われて、信じてしまうケースがあるという。
[フィッシング詐欺]IDとパスワードが乗っ取られる。
近年、多発している詐欺。ネットバンキングやネット通販サイト、スマホ決済アプリなどのIDとパスワード、さらには住所といった個人情報を盗むのが、その目的。パソコンのメールや、アイフォンの場合はショートメッセージに「不正ログインがありました。至急、確認してください」といったメッセージが届き、そこにあるURLをクリックすると、たとえばメガバンクなど本物そっくりのサイトが出てきて、IDとパスワードを入力させようとする。一方、アンドロイド系のスマホは、詐欺アプリをダウンロードさせようとするケースが多く、気づかず実行してしまうと高額な利用料金を請求される。
[通販トラブル]お得だからと飛びつくとむしろ仇に。
正規の通販サイトと見た目がそっくりでありながらも、値段が少し安い場合は要注意。商品が届かず、代金だけ取られる、あるいはクレジットカード情報が盗まれてしまう、という詐欺がある。
また、“定価の90%オフ”など、驚異的にお得な通販も注意が必要。それが定期購入になっていて、商品が届いた数週間後に再び商品が届き、2回目以降は定価というトラブルがある。お得だからと安易に飛びつかず、そういうものほど注意書きをよく読んだり、サイトに不審な点がないか確認したりすることが大切だ。
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