くらし

推理ゲームを楽しむ!?│山口恵以子「アプリ蟻地獄」

  • イラストレーション・勝田 文
『彼女は最後にそう言った』。同級生だった女性の死の真相を探る、時間ループアドベンチャーゲーム。無料。

これは、主人公が同級生の少女の死の真相を探ってゆくミステリーアドベンチャーゲーム。

東京の大学に進学して故郷の村を離れたシンタローが夏休みに帰省すると、四年前の祭りの夜に死んだはずのナナミから手紙が届く。

実は村には祭りの夜には死者が蘇るという言い伝えがあった。そして、ナナミの死は自殺で片付けられていたが、不可解な謎が残されていた。

シンタローはナナミの死の真相を突き止めようと、かつての同級生や関係者に聞き込みを行い、一歩ずつ核心に近づいてゆく……。

横溝正史『八つ墓村』を思わせる、おどろおどろしい雰囲気たっぷりの「待宵村」を舞台にした正統派ミステリーゲーム。主人公がナナミの命日8月14日を繰り返し体験するループ形式になっている。

が、しかし、本筋と関係ないゲームがわんさと続く。待ち合わせ場所の展望台を探したり、聞き込みする前に合言葉を探したり、その他諸々、どうでも良いじゃないのと言いたくなる。私は真相が知りたいのだ!

とは言え、ストーリー自体は真犯人、動機、ミスリードの仕方など、良く出来ていると思う。

実は日本のミステリー作家のトリック作成能力は海外でも評価が高く、ハリウッドでは「名前は出さない代わりに金は弾む」という条件で、トリック部分のみ創作させた例がいくつかあったらしい。勿論、新作の印税かそれ以上の対価が支払われるので、作家にも悪い話ではない。

私もトリックが作れたらなあ。

山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。近著に『夜の塩』(徳間書店)。

『クロワッサン』1008号より

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