【石井風子さん×広沢京子さん 対談】福岡という街の魅力【1】
撮影・河原諒子 文・平井莉生
わざわざ足を運びたくなる、聖地のような店がある。
広沢 飲食店も、店主の個性が強い小さい店のお気に入りを、みんなはそれぞれ持っています。例えば「自分のちゃんぽんはここ」というのがある。
石井 屋台もそうね。夕方になると続々と開店の準備をしている様子は福岡らしい風景です。
広沢 福岡は夜が長いですよね。次に連れていかないと失礼っていう感覚があるのかなっていうくらい、必ず“次の店”がある。3軒目にちょうどいいような面白い店もどんどん増えていて。
石井 飲食店ももちろんだけれど、それ以外の分野でも、福岡だけの面白い店がたくさんありますよね。『krank / marcello(フランクマルチェロ)』や『LIGHTYEARS(ライトイヤーズ)』(*3)とか、どこも店主の個性に溢れていて、わざわざ訪ねたくなる。
広沢 あの規模感で東京で出店しようとするとけっこう大変ですし、そもそもやっている側が東京に出そうと思っていないのでは? それこそ物を買うだけならネットでポチッとすれば済む話だけれど、そうじゃなくて、“聖地に行きたい”というように、“この店で買いたい”という思いが生まれる。福岡なら「周りに美味しいごはん屋さんがあるな」と“自分ツアー”を組むイメージもしやすいんですよね。
石井 一点集中じゃなくて、そうやって広がっていくのがいいですよね。広沢さんのお気に入りはどこ?
広沢 セレクトショップ『TERCEIRO(テルセイロ)』ですね。浅岡陽子さんの「YAA!!」というブランドの服がすごく素敵で。私は1階のスペースで月に1回料理教室をさせてもらっています。
石井 港にあるお店ですよね。私は“界隈を作っていく”っていうのがキーワードだと思っているんですよね。流行っているエリアじゃないとだめということはなくて、自分がよいと思った場所で自分がよいと思ったことをやって、その勢いが周辺に伝染していくような……。そんな空気が福岡全体に広がっていくといいなと思っています。
*3 『krank / marcello』は、家具や洋服、雑貨を扱うセレクトショップ。『LIGHT YEARS』は世界から集めたキルトやラグ、雑貨を扱っている。
この日訪れたのは、『B・B・BPOTTERS』。
石井さんが「街の道具店を目指した」と言うとおり、衣食住バランスよくありとあらゆる暮らしの道具が集められている。天井まで埋め尽くす物量は圧巻。10月には菓子研究家・福田里香さんが監修する「bbb hausオリジナルクッキー」を発売予定。
●福岡市中央区薬院1-8-8 TEL.092-739-2080
石井風子(いしい・ふうこ)さん●愛知県生まれ。『B・B・B POTTERS』オーナー。1991年、浄水通に店舗をオープンし、その後、現在の薬院へと移転。2018年にはゲストハウス「bbb haus」をオープンさせた。
広沢京子(ひろさわ・きょうこ)さん●料理家。1975年、千葉県生まれ。料理家として活躍する一方、生産者と消費者を繫ぐ活動にも注力。料理会などを各地で開催。福岡県糸島市在住。
『クロワッサン』1005号より