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Vol.38 出血があるのですが、お尻からなのです……。【40歳からのからだ塾WEB版】

今回は、「お尻からの出血」がテーマです。
トイレのときに出血があったり、便に血が混じっていたりすると、「もしかして大変な病気では?」と、ドキッとしますよね。お尻からの出血は、痔だけでなく、腸の病気の可能性も考えられます。
では、そんなときどんな対応をとったらよいのか。大腸肛門病専門医の山口トキコさんに聞きました。後半は、お尻からの赤黒い出血や下腹部痛などが特徴の「大腸憩室症」について詳しくお伝えします。

文・及川夕子 イラストレーション・小迎裕美子

憩室は上行結腸やS状結腸にできやすい

大腸憩室症が起こるしくみ

大腸憩室症とは、腸管内圧が上昇した結果、大腸粘膜が腸管の外側に袋状に飛び出した状態。
大腸憩室症とは、腸管内圧が上昇した結果、大腸粘膜が腸管の外側に袋状に飛び出した状態。

「便秘、暴飲暴食など、腸に負担をかける生活習慣が原因とも言われていますが、さまざまなものが考えられます。高齢になると、腸壁などの粘膜が弱くなるため、憩室ができやすくなると考えられています」(山口さん)

憩室があったとしても、多くの人では症状がないことが多く、原則として無症状の方には治療の必要はないそう。
ですが、「大腸は便の通り道なので、まれに憩室に便が詰まり炎症を起こすことがあります(憩室炎)。憩室は上行結腸やS状結腸にできやすいため、憩室炎になると左右の下腹部に痛みが出やすい、と覚えておくとよいでしょう。症状がひどくなると、出血(憩室出血)を起こしたり、腸に穴が開いてしまったりすることもあります」(山口さん)

憩室炎は、食生活(食物繊維不足)やストレスなどとも関連があるとされていて、暴飲暴食をした後や疲れているときに憩室炎になり下腹部痛が起こる人もいるそうです。

大腸憩室症・憩室炎の症状まとめ

●ときどき下腹部が痛くなり、便秘や下痢をしやすい
●左下腹部の痛み、発熱がある
●大腸内視鏡検査をしたら「憩室が多い」と言われた
●血便が出る
●突然赤黒い出血があった

こんな症状が続いていたら、消化器科や大腸肛門科を受診しましょう。

憩室炎の診断・治療は?

最後に、憩室炎の診断、治療について山口さんに解説していただきました。
診断では、「大腸内視鏡検査などで憩室があることがわかっている、腹痛もある、血液検査で炎症反応があるなどの条件がそろうと、憩室炎を疑います。必要に応じてCT検査を行うこともあります。ただ、憩室から出血が起こっていても、腸のどの憩室から出血しているかを特定することは困難な場合も多いですね。また、憩室出血のほとんどは自然止血するため、実際に内視鏡で観察した場合には既に止血している場合も少なくありません」

治療では、「絶食をしたり食事量を減らしたりして安静にし、抗生物質を投与することでほとんどが治ります。一度憩室炎を経験し、同じような痛みが出ると、用心して早めに受診される患者さんもいます。重症例として、腸に穴が開いてしまった場合には手術になります。絶食と抗生剤で出血が止まらないケースでは、内視鏡検査で止血することもあります」

憩室炎は、女性よりも男性、そして高齢者に多い傾向がありますが、女性にもないわけではありません。食生活の欧米化(食物繊維不足)も一要因で、近年、大腸憩室保有者は増加傾向にあるとも言われています。多い人では、何十個と憩室ができる場合もあるそうです。下腹部の痛みや出血が続く場合には、放置せず病院で診てもらいましょう。

ご協力いただいた医師
山口トキコさん マリーゴールドクリニック 院長 大腸肛門病専門医
やまぐち・ときこ●東京女子医科大学卒業、同大大学院修了後、研修医、勤務医を経て2000年に開業。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医。腸や便秘に関する著書も多数。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

ライター、メノポーズカウンセラー 及川夕子
更年期、まっただ中のライター。最近、ちょっと休んだぐらいでは疲れが抜けなくなってきて、以前よりもカラダのメンテが欠かせなくなったと実感。とはいえ、カラダの変化をポジティブに捉え、同年代の女性の健康に役立つさまざまな情報をお伝えしていきたいと思っています。ただいま、ヨガやマインドフルネスを実践中。ホルモン補充療法も試してみたい!

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