所要時間1分。
「腸ゆらしマッサージ」で便秘解消【後編】
便秘が改善しないのは、ねじれ腸が原因かもしれない。そう警鐘を鳴らすのは、大腸内視鏡検査のベテラン医。「お腹が痛い便秘」ならその可能性あり。毎日短時間のマッサージで腸をゆらせば、長年の便秘が解決する可能性があります。まずはセルフチェックから。
大腸内視鏡医として、便秘や過敏性腸症候群に悩む多くの患者に接している水上健さん。生活習慣を改めても便秘が改善せずに悩んでいる患者を前に、その原因を「ねじれ腸」では、と指摘。ねじれ腸とは、腸の形が正常ではなく、曲がったりねじれたりしており、日本人の8割が該当しているといいます。まずは、自分がねじれ腸かどうかを確認してみましょう。
ねじれ腸セルフチェック
・子どもの頃から便秘だった
・腹痛を伴う便秘である
・便秘と、下痢や軟便になることがある
・運動量が減ったら急に便秘になったことがある
この中から2つ以上当てはまる人は、ねじれ腸の可能性が高いそう。ねじれ腸には、決まったパターンはなく、人それぞれさまざまな形をしているそうで、親子の腸はそっくりな形をしていることが多いとか。
そのようなお腹の中の腸の形の個性によって引き起こされる不調に対し、改善策はあるのでしょうか。
「ねじれ腸によって起こる『お腹が痛い便秘』は、腸が動いているのに構造上の問題で便が引っかかっているだけだから、お手伝いしてあげれば、便はすぐに出ます。腸をゆらして、便が引っかかりやすいところをほぐしてやればいいのです」
水上さんが考案した腸ゆらしマッサージは、短時間でできる手軽なもの。生活スタイルや年齢にかかわらず、誰でも取り入れやすいのが特徴です。全身で運動する代わりに、腸に運動時のようなゆれを与えて、ねじれ腸をちょっとほぐしてあげます。「上体ひねり」以外は、あおむけで腹筋がゆるんだ状態で行うのがおすすめです。
「ねじれ腸は構造上の問題なので、運動の代わりになるこのマッサージは、長続きさせることが必要です。寝る前や起きる前に布団の中で行うのがおすすめ。そうすれば、あまり無理なく続けられると思います。1日2回が望ましいですが、難しいようなら1回でもかまいません」
お尻の下にクッションなどを敷いて行うと、腰痛の防止になる上、マッサージの効果が上がるといいます。また、あおむけに近い姿勢がとれるなら、入浴時に行ってもOK。ただし妊娠中や、腹部や腰に病気がある人は、事前に主治医に相談すること。
基本のマッサージは、左わき腹の下行結腸と、下腹のS状結腸をゆらす2種。優しい力で腸をゆさぶるようにお腹を押す。それに、肋骨の内側にある腸の曲がり角をゆらす上体ひねりを加えても、それぞれ1分でできるから、短時間で終わります。気軽に続けましょう。
マッサージをするときの注意点。
※お腹をさわって拍動しているのは動脈なので、そこはマッサージしないこと。
※発熱や急な腹痛がある、血便がある、急に体重が減ったなどの気になる症状がある場合は、腸の炎症やがんなどの病気がかくれている可能性もあるので、医療機関を受診して問題なかったらマッサージを。
肋骨の内にある腸の曲がり角は「上体ひねり」動作でゆらす。
1.腕を振ってもぶつからない広さの場所で、足を肩幅に開いて立ち、両腕を広げる。
2.背筋を伸ばして両腕を広げたまま、上体を左右にひねる。体をひねる時に息を吐く。
3.腕の力を抜き、リラックスして振る。左右1セットで20回程度、約1分間繰り返す。
落下腸の人には、「腸持ち上げ」マッサージが有効。
今回紹介した腸ゆらしマッサージを続けても効果がない場合、「落下腸」の可能性があります。
「落下腸は、大腸全体が骨盤の中に折れ曲がって落ち込んでいる状態でだいたい、ねじれ腸の人の5分の1が該当します。立った時だけ下腹がぽっこり出るのが特徴です」
落下腸のチェックポイント
・よく運動をしているのに便秘が改善しない
・立ち上がったときに急に下腹がぽっこり出る
ねじれ腸の人で、上のチェックポイントの1つでも当てはまる場合は、落下腸かもしれません。そういう人には、下に落ちた腸を本来の位置に戻す「腸持ち上げ」マッサージを行うのがおすすめです。
「便秘は不愉快で、気分が鬱々とするものです。解消できれば、ハッピーに過ごせるのは間違いありません」
1.あおむけで足を肩幅に開き膝を立てる。恥骨のすぐ上に両手の親指以外の指先を置く。
2.お腹が少しへこむくらいの強さで、おへそ付近までゆっくり押し上げる。1分間行う。
所要時間1分。「腸ゆらしマッサージ」で便秘解消【前編】はこちらから。
https://croissant-online.jp/topics/36567/
◎水上健さん 医学博士/ねじれ腸を発見し、過敏性腸症候群や便秘の診断と治療に活躍。著書に『100歳まで生きる腸の強化書』(KADOKAWA)ほか。
『クロワッサン』905号(2015年7月25日号)より