そろそろ限界越え。“脳”のお疲れ、どうするべき?【簡単にできる7つの脳疲労解消法】
イラストレーション・Nut Dao 文・黒澤 彩
脳の疲れを癒やす方法
脳も体同様、疲れていると感じたら、放っておくのはよくない。慢性的なストレスや睡眠不足による脳疲労は、脳内の神経細胞ネットワークに悪影響を与え、認知機能の低下リスクを高めることにもなるからだ。
「できるだけ頭をオフにする時間や、質のいい睡眠をとるようにしましょう。マインドフルネスや腹式呼吸などのリラクゼーション法もいいですね。やはり適度な運動も必要。ジムに通ったりスポーツをする時間がなくても、音楽に合わせて踊るなど、体を動かすことならなんでもいいんですよ」と話すのは、脳科学者の篠原菊紀さん。
規則正しい生活や運動といった基本的な対策のほかに、手軽に実践できる7つのアイデアを紹介しよう。
1. アウトドア(自然)や旅行を楽しむ
「森林浴、ウォーキングなど自然に触れることで、脳のワーキングメモリの機能改善に効果があることがわかっています」。2020年に、さまざまな研究を総合的に解析し、認知機能改善効果が認められるという論文も発表された。本格的なアウトドア体験ではなくても、公園を散策したり、自宅で植物を育てるなどでもOK。また、旅行には、移動して非日常の空間に身を置くことによる転地効果が期待できる。脳を休めるためには、家でゴロゴロするよりもどこかへ行くことが効果的。
2. 笑ったり、泣いたりする
感情を豊かに表現することが、脳疲れに効く。「笑うことで、俗に“幸福ホルモン”といわれる神経物質のドーパミンやセロトニン、エンドルフィンなどが分泌されることはよく知られていますね。それ以外にも、脳の血流が促進されたり、血圧が低下することもわかっています」。笑うのと反対に、“泣く”のもおすすめ。感動したり共感するなどの情動によって泣くと自律神経が切り替えられ、副交感神経が優位になる。ストレス物質のコルチゾールの低下も見られるという。
3. 思い出話をしたり懐メロを聴いたりする
認知症の治療法の一つとして取り入れられることもある回想療法。「昔の思い出話などをすることで、精神が安定し、認知機能の改善が促進されます。他者と共有することで脳が活性化するという面もあるでしょう」。ひとりのときは、昔好きだった曲を聴くのも一案。「懐かしい」と感じるだけでも、記憶と感情とが結びついて脳の海馬が活性化するのだという。歌ってみると、より効果的。カラオケは脳の疲労解消にもなるのだ。最新曲もいいけれど、ぜひ懐メロもレパートリーに!
4. デジタル機器から離れる
スマホなどで情報に触れ続けることで脳が過疲労になり、情報処理機能や集中力が低下するといわれている。“SNS断ち”をすると、脳疲労が回復するのだろうか? 「短期のデジタルデトックスで、脳の注意ネットワークの過剰反応が減少するという研究報告もありますが、まだ現状では、デジタルデトックス自体にどれほど効果があるのかわかっていません。ただし、ストレスの原因が明らかにSNSにあるのなら、見ないようにすることで脳疲れを軽減できると考えられます」
5. 生成AIを活用する
やや意外なのが、この方法。使い方次第で脳のメモ帳代わりになるという。「論文によって主張はまちまちです。生成AIを使うと思考力が低下するという主張もあれば、脳のワーキングメモリの容量を空けるために積極的に活用したほうがいいという意見も。要は使い方の問題でしょう」。先に説明したように、ワーキングメモリが一度にできる課題は3〜4つほど。たくさんのタスクで容量オーバーにならないように、脳のメモの一部を外付けにするような感覚で使いこなせば、脳の負担を軽くできる。
6. おしゃべりをする
人は話すことで、脳の前頭前野が活性化することがわかっている。「ただ、おしゃべりならなんでもいいというわけではなくて、“いい感じの”会話であることが重要です」。いい感じの会話とは、聞き手の脳が相手の話を予測して応答する際に、互いの脳が同期することで起こり、癒やしにもなる。「つまり、聞いている側の反応がポイントになります。なので、気の合わない人や話が噛み合わない人よりは、理想的な聞き手であるAIとおしゃべりするほうが脳にいいかもしれません」
7. ほどほどにひとり時間を作る
脳にとって孤独は大切だという研究がある。「認知機能と孤独の関係については1980年代から研究されてきました。当初はパートナーと死別して孤独になると認知機能が低下するとされていましたが、実はそうともかぎらないのです」。脳にはコミュニケーションが必要だが、いつも人と一緒なのがいいわけではないという。むしろ孤独な時間があることによって、人との関わりが深まるというのだ。「脳のネットワークと同じように、オン/オフの切り替えが重要だと考えられます」
『クロワッサン』1149号より
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