本当に痩せられる? ペットボトル・ウォーキングに挑戦。
撮影・青木和義 イラストレーション・田中ひろみ 構成&文・堀越和幸
なぜペットボトル・ ウォーキングで痩せるのか?
その理由を、ペットボトルを頭に乗せて21年、世にペットボトル・ウォーキングを広めた立役者、今村大祐さんに聞くと、こんな答えが返ってきた。
「頭に乗せると正しいバランスや姿勢でないとキープすることができません。自ずと普段あまり使われていない小さな筋肉、インナーマッスルに刺激が入り、それが痩せ効果につながります」
インナーマッスルとは背骨の周辺にある脊柱起立筋や大腰筋、内ももの奥にある内転筋などだ。
「正しい姿勢や歩行を獲得した時点でまず体形が変わります。そうしてウエストや背中など気になるところにエクササイズでアプローチすれば、ピンポイントで効かせることができるのです」
今回ペットボトル・ウォーキングに挑戦することになったのは、絵文人(えぶんじん)&仏像研究家の田中ひろみさん。日々のデスクワーク、運動不足がたたり体重が増え始め、ここ数年は膝痛も感じていて、医者に行ったら“もっと体重を落としなさい”とアドバイスされた。
「なんでこれで痩せられるのか、不思議ではありますが……」(田中さん)
半信半疑の直立で固まる田中さんの頭にペットボトルがそーっと乗せられて、さあ、いよいよレッスン開始です!
Lesson1|まずは⽴ってみよう。
頭にペットボトルを乗せて立つにはちょっとしたコツがある。
「まずガチガチに固まらないで肩の力を抜いてください。その上でまっすぐ立ちます」(今村さん)
重心は心持ち踵に。その真上に背骨を通る中心軸があって、さらにその延長線上にペットボトルがある。そんなイメージだ。
「乗せることが目的ではないので、悪い姿勢でキープできたとしてもそれでは意味がありません」
良い姿勢か、悪い姿勢かは壁に背中をつけて立てばすぐにわかる。
「まず、背中、後頭部を壁につけたまま乗せられるようになることです。その状態から片足が上げられるようになったらしめたもの。次の歩行レッスンに移りましょう」
うまくいっただろうか?
Lesson2|まっすぐ歩いてみよう。
ペットボトル・ウォーキングには3つのポイントがある。すなわち、正しく手を振る、歩幅をとる、そして一本の線上を歩く、である。
「私のウォーキング法に欠かせないポイントで、運動効率が上がり体形のラインをきれいにします」
特に一本の線上を歩く際には、地面を踏み出す脚の膝を体を支える脚の膝にこすり合わせるような感覚で繰り出し、着地する際には足裏の親指側から一本の線を捉えに行ってみよう。するとーー。
「骨盤が回旋し、内ももを使った歩きとなり、結果、歩き姿勢がスッとまっすぐに整います」
なんとかペットボトルはキープしているけれど、の悪い見本。猫背、手が後ろに振れていない、すり足……これでは、効果は望めない。
写真の田中さんに注目してほしい。ものの10分もたたないレッスンで、その歩き姿がたちまちシュッとしていないだろうか?
Lesson3| 「くびれ」 エクササイズに挑戦してみよう。
顔と下半身は固定したまま、上体だけを左右にひねる運動、これが「くびれ」エクササイズだ。
「スタートポジションで足を前後に交互させているのは、この時点で大腰筋を絞りたいから」
この状態からさらに限界までひねるから効く。しかもペットボトルを乗せたままだから、その効き方はピンポイントにして正確だ。
「体形が変わるのが実感しやすいエクササイズ、ぜひ試してみて」
右足を前に出して、靴2足分の歩幅をとり、立つ。その状態から両腕を肩のラインより少し下くらいにキープ。胸はしっかり開くこと。
↓
右・顔と骨盤は正面を向けたまま、ウエストのくびれを意識して上体を左にひねる。ペットボトルからの中心軸をしっかり意識する。
左・同じように上体を右にひねる。これを1セットにして20回繰り返す。終わったら、今度は左足を前にして、同じように20回行う。
Lesson4|肩甲骨を狙う 「背中痩せ」のエクササイズ。
まっすぐ立った状態で左右に開いた腕を頭の上に伸ばし手のひらを合わせて、その繰り返し。この動きは固まりがちな肩甲骨をほぐし、背中痩せを誘う運動。今回、田中さんにとっては、このエクササイズが一番難しかった模様。
「日常生活で両手をまっすぐに上に伸ばす動作は意外にそうありません。子どもの時にできて、大人になってできなくなる代表的な動きなので、取り戻しましょう」
右・両足を揃えて正面を向きまっすぐ立ち、開いた両腕は肩のラインより少し下くらいにキープ。肩甲骨を引き寄せるイメージで胸を張る。
左・その姿勢から両腕を伸ばし、頭の上で手を叩く。腕の位置は耳よりも後ろに来ることが大切(SIDE写真)。より背中に効く。20回繰り返す。
Lesson5| 「スローツイスト」 で、腰回りをさらにシェイプ。
正面に向いて立った状態から片足上げ、と同時に上体をひねり、対角上にある肘で膝にタッチ。
「タッチができなかったら無理につけなくてもいいので、正しい姿勢ですることが大切です」
今村さんによればペットボトルは自分専属のトレーナー。
「体の軸がブレればすぐに落ちて教えてくれますから。慣れた頃には、お腹、腰回りが自分でも驚くほどスッキリしているはずです」
右・両腕を肩のラインより少し下くらいに上げて立った状態から、上体をゆっくり左にひねり、右腕の肘と持ち上げた左脚の膝をタッチ。
左・次にゆっくり上体を右にひねり、左腕の肘と持ち上げた右脚の膝をタッチ。タッチできなかったら、可能な限り近づければいい。
無理に肘と膝をつけようとして背中を丸めてしまうと、たとえペットボトルがキープできても、ターゲットの下腹や背中に効かなくなる。
(田中さん、その後の成果はいかがですか?)
取材を終えて1日4000歩の歩行を宿題に課せられた田中さん。え!?頭に乗せたまま?と、思わずひるむが、ペットボトルは正しく歩くためのリセット材料。なので実際に乗せるのは1日数分でOK。あとは街を歩く時にも、乗っているイメージで歩くのが大切、と。そして、それを実践して1週間が経つと……。
「とてもうれしい報告なんですけれど、まずあんなに悩んでいた膝痛がなくなったんですよ」。これには通っている整形外科のリハビリの先生もビックリ。歩き方もいつものように揺れてません、と。「続けていると体が柔らかくなって、スタジオで上がらなかった腕やつかなかった肘と膝もつくようになりました」。そして肝心の痩せ効果は、以下のような数字とあいなった——。
(2週間後)
ウエスト→ –2.0cm
太もも→ –1.0cm
体重→ –2.0kg
『クロワッサン』1121号より