医師に聞く「夏太り」の原因。
イラストレーション・ながしまひろみ 文・兵藤育子
たくさん汗をかいて、食欲も減退する夏。それなのに痩せるどころか、なぜ太りやすいのか。イシハラクリニック副院長の石原新菜さんいわく、夏は太る条件が揃っているのだそう。
「寒いときは基礎代謝を上げて体内に熱を作ることで、体を守ろうとするのですが、そもそも夏はその必要がないので、代謝が下がってしまいます。これがまず、太りやすくなる理由のひとつです。汗をかいているのに、とも思いがちですが、暑くて自然に出る汗は体を冷やすのが目的で、運動で代謝が上がることでかく汗とは違うのです」
ただでさえ代謝が下がる季節なのに、夏特有の生活習慣が追い打ちをかけてしまっているのも見逃せない。
「私はよく、現代人の夏バテは内臓が冷えることによる不調で、“冷えバテ”なのだとお話しするのですが、それもまた代謝を下げることにつながっています。
一日中クーラーの効いた部屋で薄着で過ごすのもそうですし、アイスコーヒーやかき氷など冷たい食べ物・飲み物をどうしても多くとってしまいますよね。
暑くて料理をするのが面倒だったり、食欲があまりわかないというのもあって、食事はさっぱりとした喉越しのいいものを選びがち。タンパク質や鉄分、ビタミンB群など、代謝に関わる栄養素が不足してしまいます。
お風呂も湯船に浸からず、シャワーで済ませてしまう人が多いと思うのですが、それだとクーラーで冷えた体が芯から温まりません。夏でも体や内臓は、自覚以上に冷えているのです」
もうひとつ、大きな要因となっているのが睡眠。暑くて寝苦しい夜は、ダイエットの大敵でもあるのだ。
「睡眠と代謝は密接に関わっていて、質のよい睡眠をとると疲労が回復して、次の日は元気に動けますし、お通じもよくなります。クーラーは体に悪いからと、寝るときにタイマー設定にして、切れるたびに暑くて目覚めるよりは、つけっぱなしにして寝具で調整するほうが、快適に眠ることができますよ」
近年は猛暑が秋口まで長引くことが多くなっているが、それはつまり代謝の低下や自律神経の乱れなど体の不調を引きずりながら、太りやすい時季が続いていくことも意味している。
「夏太りは不調のサインともいえます。同じ環境下でも年齢とともにダメージは大きくなるので、夏こそ外的要因に振り回されないような工夫をして、自分の体を大切にしてあげたいですね」
『クロワッサン』1121号より