頭が痛い、だるい、眠い…。こんな症状、実は気象のせいかも?
イラストレーション・木下綾乃 文・石飛カノ
記録をつけることが大切
自覚すれば症状が軽くなるケースも。
繰り返し現れる痛みや不調の原因が分からないと、人は非常に不安になるもの。週に何度も突然のめまいに襲われたり、1カ月に数度、寝込むほどの頭痛の症状が現れたり。
「いつ来るか分からない痛みにおびえて旅行にも行けない、友だちと約束もできない。仕事にも影響が出て、痛みや不調がますます悪化します。これが“痛みの悪循環”です」
佐藤さんがこうした患者さんにすすめているのが、「痛み日記」をつけること。天気の変化と痛みの程度を記録することで、原因不明だった不調に理由があったことが自覚できる。それだけで症状が軽くなるケースもあるとか。
実は人間はとても敏感に変化を察知。
痛みの悪循環に陥ってしまう理由は、度重なる痛みで脳が変化してしまうから。子どもの頃からの経験で「歯の治療=痛い」という認知が繰り返し脳にインプットされると、歯医者さんに行くだけで痛みを感じるようになる。
慢性痛をもっている人は波があるのであまり痛みを感じないときもある。ところが、痛みにとらわれていつも痛いと感じるようになると睡眠障害などが起きることも。
「でも、天気の影響という認識が構築されれば痛みは減ります。自分ひとりではないということが分かるだけで痛みに対する認知が変わる。そういう感覚をもつことがとても重要です」
最低1カ月は記録を続けてみる。
「痛み日記」に記入するのは、天気、気圧、その日にあった出来事、痛みの程度、運動や睡眠状態の6項目。
「こうして日記をつけていくことで、自分の体と天気がどう連動しているかが見えてきます。天気が下り坂になるときに不調を感じる人もいれば、逆に上り坂になるときに調子を崩す人もいます。どういうときに痛みや不調が現れるのかを知ることが大事です」
最低でも1カ月程度、「痛み日記」をつけることで、症状が出るタイミングが分かってくるはず。それが分かれば薬などでの対処も可能。こうして不調のベースラインを徐々に下げていくことが、気象病の改善につながる。
[痛み日記と必要な6項目]
●天気
まずは晴れ、曇り、雨といった天気の情報を書き留める。一日のうちの変化も漏れなく。
●気圧
気圧計がなくても気象庁が時間ごとの数値を発表しており、アプリなどもあるので参考に。
●日記
その日あった出来事や薬の服用、ストレスを感じたことについて記録する。
●痛みの程度
0から10までのスケールで痛みを判定。その日一番強い痛みと弱い痛みの両方を記録。
●運動
運動はした日だけで構わないので何をしたかを書いておく。散歩レベルの運動でもよし。
●睡眠
睡眠は「よく眠れた」「あまり眠れなかった」「眠れなかった」の3段階でチェック。
佐藤 純(さとう・じゅん)さん●医師。名古屋大学教授を経て、2007年に愛知医科大学病院・痛みセンターにて気象病外来・天気痛外来を開設。2018年より中部大学生命健康科学部教授に就任。『天気痛 つらい痛み・不安の原因と治療方法』(光文社新書)など天気痛に関する著書多数。
『クロワッサン』1022号より
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