気になる曲名を知る!?『Shazam』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
喫茶店でお茶を飲んでいるとき、お店で品物を選んでいるとき、あるいは普通に街を歩いているとき、流れてきた音楽に心を惹かれ、聴き入ってしまった経験はないだろうか?
多分、そういう経験をした人は少なくないと思う。
しかし、哀しいかな「良い曲だなあ。何ていう曲だろう?」と思っても、訊ける相手がいないと分らないまま終わってしまうことが多い。
ヒット曲なら後で題名や歌手名が分るが、そうでない場合、二度とその曲と出会えなかったりする。
Shazamはそんなあなたや私をサポートしてくれるアプリだ。
気になる音楽が流れていたら、このアプリをタッチすれば良い。曲を集音・分析して、必要なデータを提示してくれる。そのままレコード屋さん(今や死語)に行って同じレコードやCDを買うこともできる。
派遣店員時代、有線放送で流れた曲が気に入ったが、曲名が分らず、そのうちメロディも忘れてしまった。あのときShazamがあれば、残念な思いをしなくてすんだのに。
昔、うちの母は「本当の名歌手というのは、道を歩いている人の足を止めさせる」と言った。コンサート会場やステレオの前ではお客が「聴こう」と構えているが、街中でその気のない通行人の注意を惹くには、よほどの力量が必要だ、と。
ちなみに、母が信号待ちしているときに流れた街頭放送に聴き入ってしまったのは淡谷のり子「君忘れじのブルース」と、赤坂小梅「炭坑節」だそうだ。聴けば分ります。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。近著に『おばちゃん介護道』(大和出版)
『クロワッサン』990号より
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