免疫強化にも代謝アップにも、 日本の漬物の発酵力はすごい!
撮影・青木和義、角戸菜摘 文・一澤ひらり
世界一の発酵国日本。なかでも漬物は全国各地に600種以上あるといわれるほど多種多彩だ。
「まず漬ける材料の野菜、根菜がたくさんあるし、ぬか、味噌、酒粕といった漬け床の種類も豊富。しかも地方によって漬け方が違うので、たくさんのかけ合わせの漬物ができます。これが世界に誇る漬物大国になった理由です」
と説明するのは金内誠さん。しかし漬物すべてが発酵食品というわけではない。梅干しや浅漬けのような発酵しない漬物と、ぬか漬けや麹漬けなどの発酵する漬物の2つに分かれる。
「発酵を伴う漬物の主な発酵菌は乳酸菌で、大量の食塩や有機酸に耐えることができるんです。乳酸菌は空気中に浮遊しているものや野菜に付着しているもの、漬け床に付着しているものなどが由来源となり、野菜に含まれる糖類の作用で発酵します。乳酸発酵した漬物を食べると一部の乳酸菌が腸内に棲みついて善玉菌となって増殖し、腸内環境をよくしてくれるんです」
ぬか漬けは乳酸発酵の代表的な漬物で、ぬか床1gに最大で10億個もの乳酸菌が含まれるといわれる。ほかにも粕漬け、味噌漬け、塩漬け、醤油漬けなども乳酸発酵しているもので、日本各地にご当地名物の漬物が生まれることに。
「こうした植物性乳酸菌には免疫活性作用があり、発がん性物質の排出や便通をよくするなどいいことずくめで、漬物は日本人にとって食べる整腸剤でもあるんです。しかも野菜を加熱しないのでビタミンCが残存しやすく、さらに発酵菌が多種多様なビタミンを生合成するので、美容効果も満点ですね」
金内さんによれば、乳酸発酵の漬物には3つの利点があるという。1つは乳酸菌の作用で腐敗や食中毒の原因になる菌の繁殖が抑制され、長期保存が可能になることだ。
「2つ目は発酵によりアミノ酸が増えてうま味に変わるので、おいしくなるんです。さらに3つ目は、発酵を司る微生物が多様な栄養成分を生産するので体にいいんです。滋味豊かな漬物は日本人の知恵の結晶といえますね」
金内 誠(かなうち・まこと)●宮城大学 食産業学部 教授。1971年、山形県生まれ。博士(生物環境調節学)。監修した書籍に『すべてがわかる!「発酵食品」事典』(世界文化社)など。
『クロワッサン』973号より