お米農家 やまざき 山﨑瑞弥さんのぬくもりに溢れるオリジナル一筆箋。
撮影・清水朝子
【お米農家 やまざき 山﨑瑞弥さん】届ける相手のことを思うと、自然と言葉が浮かんできます。
夫婦で手間を惜しまず作ったお米をネット販売中心に届ける「お米農家やまざき」。宅配便で送る荷物には、妻の山﨑瑞弥さんがしたためた一筆箋が必ず添えられている。左の稲穂柄の用紙は、なんとオリジナルだという。
「郵便切手の〈野菜とくだものシリーズ〉にも使われた波多野さんの絵が好きで、何度か個展に通ううちに親しくなり、うちのお米も買ってもらうようになったんです。そのうち『一筆箋をあれだけ愛着持って使うのなら作りましょうか?』と言っていただいて」
元からあった稲穂の絵を使った一柄から始まり、山﨑家の本(『お米やま家のまんぷくごはん』主婦と生活社)のため、米の一生のイラストを波多野さんに描いてもらったのを機に、籾から芽を出した苗、といって茎が割れて籾の粒が顔を出したところなど、生育段階を追うバージョンも作製。
「相手や季節によって絵柄を選べるように。田んぼや稲の様子を伝えるのにオリジナルを一通り送った人には、波多野さんの個展で買い求めた野菜柄を、たとえばとうもろこしの絵に『とうもろこしごはんがおいしい季節です』などとレシピを書き添えたり」
毎日、田んぼから戻り夕方に出荷するまでの間。ちょうどおやつの時間帯で気持ちに余裕が生まれる中で、下書きするでもなく、定型文を記すでもなく、一枚一枚手書きしていく。
「相手のことを思うと自然と言葉が浮かんできます。そろそろ娘さんが立って歩く頃だなと思ったら、『おにぎり持って散歩はいかが?』といった感じです。心を込めるには万年筆とインクがいい。強弱がつけられるし、ペン先の太さも選べるし、相手を思って書くペースに合っている気がします」
文具好きの山﨑さんは、書き味がよく手頃な価格の透明軸の万年筆を取り揃え、それぞれ好みの色のインクをボトルから充填して使っている。紙の色ごとにインクの発色も確認済みだ。
「そら豆の絵の白い紙の一筆箋には、黄緑の文字が映えそうですよね。そういうことを考えるのも楽しみで」
ひとつひとつが丁寧。山﨑さんの一筆箋は、ぬくもりにあふれている。
山﨑瑞弥(やまざき・みずや)●お米農家 やまざき。夫と営む農薬や化学肥料を使わない米作りと温かい人柄で雑貨店店主などからの信頼も厚い。注文は http://www.okome-yamazaki.com/ で。
『クロワッサン』975号より
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