石黒智子さんの工夫ある暮らし。冷蔵庫の収納スタイルを、他の場所にも応用して。【前編】
撮影・岩本慶三
暮らしの変化に合わせて、収納や家事も見直します。
すっきりと整い、一目で全体が見渡せる石黒智子さんの家の冷蔵庫は、『クロワッサン』でもお馴染みだ。
「冷蔵庫は、家の中で一番よく使う、家族の共有スペース。この収納さえうまくできていれば、他は簡単です」
と石黒さん。確かに、日々中身が変わり、ものの出し入れが頻繁な冷蔵庫は、整理・収納の基本といえる。
「個人のクローゼットや机の収納は自分のやり方を貫けばいいけれど、冷蔵庫は家族みんなが使いやすいことが一番大切。冷蔵庫とじっくり向き合って家族にとって最適な収納スタイルを見つければ、家じゅうに応用できます」
収納容器にラベルは貼らずに、ものによって容器の形を替えたり、透明のものを選ぶことでパッと見て中身が判別できるようにする。収納専用グッズではなく空き瓶などで代用する。これらは、石黒さんが夫と息子と3人で冷蔵庫を使う中で確立してきた考え方で、台所や仕事机など他の場所にも通じる。
「例えば『常備菜はここに置く』などと母親だけでルールを決めてしまい、それが家族の性格に合っていなければ、誰かが他の場所に置くたびに直すことがストレスになります。それよりも家族が自然に実践できるほうがいい。うちの場合、庫内のものの定位置はあまり決めずに空いているところに戻します。空間にゆとりがあるので収まらないことはないし、容器で中身を見分けるので行方不明にもなりません」
ラベルを貼る・貼らない、定位置を決める・決めないなど、やりやすい方法は家庭により様々なので、家族で模索してほしい。また、暮らしの変化に合わせて収納を見直すことも大切だ。
「子どもの成長や夫婦の仕事など、生活は変わりますからね。近隣に住む姑の介護で食事を運んでいた時には、小分けにした食材など庫内に今よりものが多かったので米は外に出していました(今は野菜室に収納)。年齢を重ねて、食べる量が減ったら常備菜の容器を小さくするかもしれないし、透明な容器でも中身を間違えるようになったら文字を大きく書いたラベルを貼るかもしれない。ガチガチに決めずに、その時時で最良の方法を選べばいいんです」
石黒さんの仕事が忙しい今、料理をするのは主に夫の役割。
「手作りの惣菜を丸い容器に入れて冷凍し、型から抜いて保存するやり方は、夫が考えました。中身が固まれば容器は別のことに使えますし、これでちょうど2人分。いい方法でしょう。『台所は女の城』などと言って他の人を寄せつけないのではなく、収納も家事も家族で共有し、分担する。そうすれば、介護や夫の定年など状況が変わった時、女だけが家に縛られずにすみます」
後編では、石黒さんの冷蔵庫の収納の具体的な考え方と、それを応用した他の場所の例を紹介する。
石黒智子(いしぐろ・ともこ)●主婦、エッセイスト。独自のセンスと発想で、合理的な生活用品の選び方、収納、家事の方法を提案する。著書に『探さない収納』など。
『クロワッサン』970号より
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