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【岩井志麻子×滝本誠 対談】異世界をのぞく、偏愛的読書の愉悦。【前編】

ホラーやミステリー、犯罪ノンフィクションを愛する岩井志麻子さん、「変態っぽいのは任せて」と公言する滝本誠さんの読書談議、一体どうなる?
  • 撮影・三東サイ   
岩井志麻子さん(左)と滝本誠さん(右)

滝本誠さん(以下、滝本) きょうは怖いもの、エロティシズム、グロテスクなものなど、人間のダークな部分をのぞく読書の楽しみについて語りたいと思います。岩井さんとは、17世紀に書かれたバジーレの『ペンタメローネ』という、大人の残酷童話みたいな本が原作の映画『五日物語 3つの王国と3人の女』の推薦コメントでご一緒したことがあります。「生皮を剥がれた老婆」など、過激な訓話が並ぶこの本で読書会をやったら面白いし、すごく怖いと思うんです。岩井さんの作品『ぼっけえ、きょうてえ』もすごく怖かった。

岩井志麻子さん(以下、岩井) 恐怖って不快な感情のはずなのに、なぜこんなに求めてしまうんだろう。それも知りたいんです。ところで、最近日本でも公開された韓国映画『お嬢さん』が衝撃でした。怖さとエロ、笑いがミックスされてるところが。

滝本 あの映画は傑作です。原作はサラ・ウォーターズの『荊の城』というエロティックなミステリーですが、この映画は舞台を日本統治下の朝鮮半島に置き換えて描いている。復讐とエロティシズムをモチーフにした作品で、パク・チャヌク監督独特のブラックユーモアも随所に。北斎の春画を効果的に登場させているのもいい。

岩井 この監督の作品で復讐3部作が有名ですが、韓国の映画って復讐話が多いですよね。まさに〝恨〟、復讐することが生きる目的、みたいな。絶対に許さない。許さないことが愛なんですね。

滝本 岩井さんの作品『タルドンネ』は、韓国映画『チェイサー』に触発されて生まれたとか?

岩井 ええ。韓国の有名な連続殺人事件を題材にした『チェイサー』は、犯人を演じたハ・ジョンウの迫真の演技もあり、本当に怖かった。それでモデルとなった殺人犯のことを調べに韓国へ行ったんですよ。日本では考えられないけど、韓国の警察は取材にきた外国の小説家に、調書とか発見された死体の写真とかバンバン見せてくれる。犯人は風俗の女性を呼んでは次々に殺害したんですが、なにもせずに帰している人、仲良くなって一緒に旅行したりしている人もいる。そういう人と殺された人との違いはなんだったのか、謎なんです。

『荊の城』サラ・ウォーターズ 中村有希 訳 創元推理文庫
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