中嶋朋子さんの人生の道しるべとなった、ミヒャエル・エンデ。
撮影・岩本慶三 文・嶌 陽子 ヘア&メイク・新田美佐子
「本を読んで感銘を受けたフレーズや文は、必ずメモしておくんです」そう言って、いつも持ち歩いているという手のひらサイズのメモ帳を見せてくれた中嶋朋子さん。そこには、10年以上愛読しているという『ものがたりの余白』の言葉もいくつか書かれていた。たとえば、こんな一節だ。
“理想主義者は一般に、人生の平凡な事実を見ようとしない。(たとえば)偏平足や虫歯の穴などですね。それに反して、いわゆる現実主義者たちは大いなる理想はすべて幻想だと言い、虫歯の穴や偏平足だけを見る。そして、ユーモアはこの両方を受け入れます”
「くすっと笑えるし、“なるほど”とも思える。この本から、いつも大切なことを教えてもらっている気がします」
『ものがたりの余白』は、ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデが、最晩年に、自身の創作の秘密や思想について語った作品。『モモ』や『はてしない物語』などのファンタジー作品で有名なエンデと、中嶋さんが初めて出合ったのは小学生の頃だった。「『はてしない物語』を学校の図書室で見つけて読み始めたんですが、分厚いし、内容もかなり哲学的で難しい部分があったりして、途中で挫折してしまったんです」
再び手に取ったのは、20代後半になってから。あまりの内容の深さと面白さに、ページをめくる手が止まらなくなってしまったという。「それから、エンデのほかの作品も読みたくなって、たまたま古本屋で見つけたのが、この本。初めて読んだ時は震えましたね。この本に出合えてよかったと、心から思えました。これと一緒に、エンデの創作ノートや詩、エッセーなどをまとめた『エンデのメモ箱』も読み続けています」
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