青木 目に入るものがストレスにならないことって大事ですよ。僕のクライアントで気に入らなかった床材を張り替えた方も、素材を選ぶ時に予算に制限はあったけれども、それでも自分が選んだものだから満足できるとおっしゃっていました。自分が何にストレスを感じているかが分かれば、おのずと行動すべきことが分かりますよね。
大平 まさにそう。私の場合、取材で他の方のキッチンを見せてもらった時に扉がついているのを見て「いいな」と思って、あ、私は扉がないことがストレスだったんだと気づいたんです。他にも、スウェーデンを旅行した時にどのホテルにもタオルウォーマーがあって「いいな」と思って、自宅にも買ったんですね。結果的にバスタオルはいつも乾いているし冬はお風呂場もあったかいし、自分はこれまでバスタオルがなかなか乾かないことが嫌だったんだと気づきました。
青木 「いいな」と思う気持ちを深掘りしていくと、日ごろ感じていたストレスに気づきますよね。何も考えずにいきなりショールームに行っても、そういう気づきは得にくい。やはり普段から心のどこかで気にかけておいたほうがいいんでしょうね。
大平 確かに、ショールームよりも自分が気に入っている行きつけのビストロとか、仲のいい年上のご夫婦のお宅とか行った時にヒントが得られそう。それこそ扉の材質とか、キッチンとか、使われている電化製品とか……。
青木 キッチン用品や電化製品はどんどん進化していますから、ある程度情報は仕入れておきたいですね。
大平 そう、こんな使いやすい製品が出てたんだ、って思いますよね。魔法瓶と同じ構造で、お湯が冷めないバスタブがあったり。
青木 そうしたものも何が合うかは人それぞれなので、自分の好みを自覚することが大切ですね。
大平 私、前はコンロの五徳をちゃんと磨く自分がいいと思っていたけれど、五徳回りがフラットなコンロに替えたらやっぱり楽なんですよ。それって手数を少なくするということなんですよね。
青木 楽することは悪いことじゃないんです。自分たちの親の世代くらいには我慢するのが美徳という意識がありますが、我慢はしなくていいと思います。手数を減らすことで浮いた時間を自分のことに使ってこそ大人だなと思います。
大平 私、心のどこかで楽をしちゃいけないって、思っていました。でもそんな思い込みを取り払わないといけないですね。もっと楽しまないと。