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大人のための「エリック・カール展」。原画のむこうに、人生の物語を見つける

日本語版が発行された1976年から50年、「子どものための絵本」という枠を超え、世界で4,800万部のロングヒットをつづける『はらぺこあおむし』。東京都現代美術館では、2026年7月26日(日)まで「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」が開催されています。絵本を作る構想段階の「ダミーブック」や、日本初公開となる貴重な原画、さらには彼のアトリエの再現まで、エリック・カールの創作の源泉に迫ります。

文・岡 のぞみ

ダミーブックからアトリエまで。創作の源泉を巡る旅

会場入り口には、エリック・カールの絵本に登場するドラネコとネズミがお出迎え
会場入り口には、エリック・カールの絵本に登場するドラネコとネズミがお出迎え
画家に扮した、はらぺこあおむし 《『はらぺこあおむし』25周年記念ポスター》1994年
画家に扮した、はらぺこあおむし 《『はらぺこあおむし』25周年記念ポスター》1994年
第1章では、さまざまな表情のはらぺこあおむしの原画が展示《『はらぺこあおむし』1969年版「ちっぽけだった あおむしは、ほら、こんなにおおきくて、ふとっちょに なったのです。」》1969年
第1章では、さまざまな表情のはらぺこあおむしの原画が展示《『はらぺこあおむし』1969年版「ちっぽけだった あおむしは、ほら、こんなにおおきくて、ふとっちょに なったのです。」》1969年
展示作品を引いた場所から鑑賞してもまた楽しい 《『はらぺこあおむし』1987年版表紙》1987年
展示作品を引いた場所から鑑賞してもまた楽しい 《『はらぺこあおむし』1987年版表紙》1987年
この“穴”をあけた絵本のアイディアが『はらぺこあおむし』につながったそう
この“穴”をあけた絵本のアイディアが『はらぺこあおむし』につながったそう
それぞれの言語で。世界中で愛される『はらぺこあおむし』
それぞれの言語で。世界中で愛される『はらぺこあおむし』
会場入り口には、エリック・カールの絵本に登場するドラネコとネズミがお出迎え
画家に扮した、はらぺこあおむし 《『はらぺこあおむし』25周年記念ポスター》1994年
第1章では、さまざまな表情のはらぺこあおむしの原画が展示《『はらぺこあおむし』1969年版「ちっぽけだった あおむしは、ほら、こんなにおおきくて、ふとっちょに なったのです。」》1969年
展示作品を引いた場所から鑑賞してもまた楽しい 《『はらぺこあおむし』1987年版表紙》1987年
この“穴”をあけた絵本のアイディアが『はらぺこあおむし』につながったそう
それぞれの言語で。世界中で愛される『はらぺこあおむし』

展示の始まりとなる第1章は、代表作である『はらぺこあおむし』の誕生とその背景を深く掘り下げています。
会場には、絵本を作る構想段階で作られる絵コンテのような「ダミーブック」が展示されています。実際に出版された内容とは異なる初期の構想を見ることで、カールがどのように作品を磨き上げ、一冊の絵本へと完成させるプロセスを肌で感じ取ることができます。

彼がデザインした紙が綴じ込まれた工作キット。原画の中にも、同じような模様の薄紙を見ることができる
彼がデザインした紙が綴じ込まれた工作キット。原画の中にも、同じような模様の薄紙を見ることができる

エリック・カールの作品は、筆やペンで直接描くのではなく、色を塗った紙を切り貼りする「コラージュ(貼り絵)」という技法で生み出されています。一般的なコラージュのように新聞や雑誌などの既存の素材を使うのではなく、薄い紙に自ら色を塗り、豊かな模様をつけていきます。作品づくりは、特定のモチーフを決めずに、無心に、そして自由に、何枚もの色紙を作ることから始まるといいます。

作品を描く段階になると、それまで作り溜めてきた膨大な色紙のストックが、彼にとっての「パレット」へと変わります。描きたいものに合わせて、そのパレットの中から最もふさわしい色や模様の紙を探し出し、切り取り、組み合わせていきます。原画を間近で見ることのできる本展では、一枚一枚に宿る繊細な表情をより鮮明に感じ取ることができます。

原画でこそ味わえる、筆致や画材の質感などが見て取れる楽しさがあるので、ぜひ、可能な限り作品を間近に見てその繊細なコラージュ技術を目に焼き付けてください。

人生の光と影を辿って、色彩の魔術師が生まれた軌跡

絵本の世界に入り込めるフォトスポット
絵本の世界に入り込めるフォトスポット
3歳の娘のためにつくった絵本が元になっている 《『パパ、お月さまとって!』1986年 「『お月さまと あそびたいな。』モニカは、お月さまのほうへ てを のばしました。」別案》1986年
3歳の娘のためにつくった絵本が元になっている 《『パパ、お月さまとって!』1986年 「『お月さまと あそびたいな。』モニカは、お月さまのほうへ てを のばしました。」別案》1986年
自身の体験をきっかけに生まれた絵本 《『いちばんのなかよしさん』2013年 「ひみつを ひそひそ はなすように なったら」》2013年
自身の体験をきっかけに生まれた絵本 《『いちばんのなかよしさん』2013年 「ひみつを ひそひそ はなすように なったら」》2013年
《『いちばんのなかよしさん』の原案となった『けっこんしたよ』の表紙別案》2013年
《『いちばんのなかよしさん』の原案となった『けっこんしたよ』の表紙別案》2013年
《『いちばんのなかよしさん』2013年「あっ おはなばたけだ!」》2013年
《『いちばんのなかよしさん』2013年「あっ おはなばたけだ!」》2013年
絵本の世界に入り込めるフォトスポット
3歳の娘のためにつくった絵本が元になっている 《『パパ、お月さまとって!』1986年 「『お月さまと あそびたいな。』モニカは、お月さまのほうへ てを のばしました。」別案》1986年
自身の体験をきっかけに生まれた絵本 《『いちばんのなかよしさん』2013年 「ひみつを ひそひそ はなすように なったら」》2013年
《『いちばんのなかよしさん』の原案となった『けっこんしたよ』の表紙別案》2013年
《『いちばんのなかよしさん』2013年「あっ おはなばたけだ!」》2013年

第2章は、エリック・カールの人生を辿っていくような順番で展示されており、絵本作家になるまでの軌跡をたどります。エリック・カールは、1929年にアメリカで生まれ、8歳のときに両親の故郷であるドイツへ移住しますが、自由の制限や大切な友人との別れといった、多くのものを失う「影」の体験を余儀なくされました。こうした自身の体験に基づき、離れ離れになった友だちを探す旅を描いた日本初公開の原画『いちばんのなかよしさん』からは、彼の色彩の裏にある切実な願いが伝わってきます。

会場には名作『パパ、お月さまとって!』の世界観を表現したフォトスポットも用意されており、幻想的な物語の一部になったような特別な体験が楽しめます。

大人も魅了されるインタラクティブな世界

「読む」だけでは終わらない、幅広い楽しみ方ができる 《エリック・カール作『すきな たべもの なーに?』》1983年
「読む」だけでは終わらない、幅広い楽しみ方ができる 《エリック・カール作『すきな たべもの なーに?』》1983年
いきいきとした動物たちの表情や色彩にも注目《エリック・カール作『キャッチボールしよう!』》1983年
いきいきとした動物たちの表情や色彩にも注目《エリック・カール作『キャッチボールしよう!』》1983年
「読む」だけでは終わらない、幅広い楽しみ方ができる 《エリック・カール作『すきな たべもの なーに?』》1983年
いきいきとした動物たちの表情や色彩にも注目《エリック・カール作『キャッチボールしよう!』》1983年

エリック・カールの作品の特徴でもある仕掛け絵本に出合える第3章彼は絵本を単に読むだけのものではなく、子どもたちが主体的に関わり、遊ぶことができる「読めるおもちゃ」としても捉えていました。ここでは、主人公と一緒に形を探したり、動物と共に体を動かしたりと、五感を刺激する独創的なアイデアの数々が紹介されています。

ページに開けられた穴や紐を使って動かせる動物など、遊び心あふれるインタラクティブな仕掛けを、大人の視点から再発見できる空間になっています。

日本との深い絆。感謝の気持ちが詰まった最終章

東日本大震災後のチャリティオークションの作品
東日本大震災後のチャリティオークションの作品
最終章でも「フレームをもったあおむし」をはじめ、さまざまな表情のはらぺこあおむしに出合える
最終章でも「フレームをもったあおむし」をはじめ、さまざまな表情のはらぺこあおむしに出合える
再現されたアトリエでは創作風景が浮かんでくる品々を展示
再現されたアトリエでは創作風景が浮かんでくる品々を展示
東日本大震災後のチャリティオークションの作品
最終章でも「フレームをもったあおむし」をはじめ、さまざまな表情のはらぺこあおむしに出合える
再現されたアトリエでは創作風景が浮かんでくる品々を展示

最終章となる第4章では、エリック・カールと日本との深い絆、そして創作の舞台裏が紹介されています。日本にある絵本美術館に感銘を受けたことが、彼の故郷であるアメリカに自身の美術館を建てる大きなきっかけとなったというエピソードは、私たち日本人にとっても感慨深いものがあります。東日本大震災時には、作品を通じて被災した子ども達に寄付が贈られました。

展示の最後には、彼が実際に着用していたスモックや、自身で色付けした薄紙が並ぶアトリエを再現したエリアが広がり、作品が生み出されるシーンを間近に感じることができます。本展のメインビジュアルである「フレームをもったあおむし」の原画も、この温かな空間で静かに来場者を迎えてくれます。

原画を中心に4章にわたって紹介される、大規模な展覧会。見応えあり!
原画を中心に4章にわたって紹介される、大規模な展覧会。見応えあり!

鑑賞の記念に。特設ショップの限定グッズも大充実

パッケージがアート! 「アンリ シャルパンティエ」のプティ・ガトー・アソルティ(焼き菓子8種)
パッケージがアート! 「アンリ シャルパンティエ」のプティ・ガトー・アソルティ(焼き菓子8種)
「ファミリア」とのコラボトートバッグ
「ファミリア」とのコラボトートバッグ
ここでしか買えない「ayanofukumura」のガラスアクセサリー
ここでしか買えない「ayanofukumura」のガラスアクセサリー
表紙が開く仕様の、ミニチュア絵本マグネット
表紙が開く仕様の、ミニチュア絵本マグネット
絵本のコーナーも大充実!
絵本のコーナーも大充実!
パッケージがアート! 「アンリ シャルパンティエ」のプティ・ガトー・アソルティ(焼き菓子8種)
「ファミリア」とのコラボトートバッグ
ここでしか買えない「ayanofukumura」のガラスアクセサリー
表紙が開く仕様の、ミニチュア絵本マグネット
絵本のコーナーも大充実!

鑑賞後のお楽しみ、会場内の特設ショップで買うことができるグッズも大充実。

絵本モチーフがデザインされたボックスに入った「アンリ・シャルパンティエ」の焼き菓子や「ファミリア」とのコラボバッグ、「ayanofukumura」のガラスアクセサリーなど、エリック・カールのデザインや色彩にインスパイアされたデザインはどれも可愛らしく、記念に買って帰りたくなるものばかり。また、あらためて読みたくなる絵本のコーナーも必見です。

本展は、「大人の方にこそ見ていただきたい」という学芸員の言葉通り、エリック・カールの歩んだ人生や制作過程、本に込められた思いを知ることで、参加者それぞれが「本の向こうがわ」にあるものを想像する経験ができます。日常の喧騒をひととき離れ、エリック・カールが創りあげた温かな世界を、原画ならではの豊かな質感とともに受け取ってみてはいかがでしょうか。

「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」
会期:2026年4月25日(土)〜7月26日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1階/3階
開館時間:10時〜18時(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(7月20日をのぞく)、7月21日
観覧料:一般 2,300円、大学生・専門学校生・65歳以上 1,600円、中高生 1,000円、小学生以下 無料

Eric Carle: Art, Books, and the Caterpillar is organized by The Eric Carle Museum of Picture Book Art, Amherst, Massachusetts,  United States.

※本記事は内覧会で許可を得て撮影しています

 

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