『無理して頑張らなくても』チェ・ウニョン 著──あの頃の気持ちを蘇らせる14篇の刹那
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
『わたしに無害なひと』などで日本の読者にも親しまれている韓国現代作家による作品集。14の短篇が収録されている。
巻頭に置かれた表題作は、高校で人気者の少女と同じ友達グループになった主人公の話。終盤に〈無理して頑張らなくても〉という言葉が出てきて、その後に繋がる言葉がしっくりきた。
着地点の余韻はそれぞれで、微笑ましいものも切ないものもあるが、自分が心つかまれた短篇の多くは、「齟齬」が描かれていると感じた。表題作もそうだが、疎遠になった友人との間に生じたすれ違いを振り返る「森の果て」、ルームシェアしている二人が登場する短篇で、タイトルに対する回答に膝を打つ「私たちが学べないもの」、教師と教え子が時を経て再会し、まさに齟齬が浮かび上がる「ムンドン」、自分にとっては辛かった少女時代について、母親が異なる印象を持っている「良き時代」等。この感覚知っている、と思うことばかりで、帯の「読んでいる間ずっと自分の人生を振り返っていました」という言葉に共感。猫好きとしては「一時預かりボランティア日記」にきゅんとした。少女を応援したくなる「夕暮れの散歩」も好き。ああ、書ききれない。
『クロワッサン』1156号より
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