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『つぐ minä perhonen』世田谷美術館 ──水面の波紋のように「つぐ」もの

青野尚子のアート散歩。今回は、それぞれの人にとっての「特別な日常着」を作り続け、今年、創設30周年を迎えた「ミナ ペルホネン」。「つぐ」という、水面に起こる波紋のようなイメージの展覧会だ。

文・青野尚子

それぞれの人にとっての「特別な日常着」を作り続け、今年、創設30周年を迎えた「ミナ ペルホネン」。海外を含め、これまでにもその活動をたどる展覧会が開かれてきた。11月に始まる展覧会は「つぐ minä perhonen」というタイトル。「つぐ」という、水面に起こる波紋のようなイメージの展覧会だ。

“swing camellia” 2022-23→a/w Photo:Hua Wang
“swing camellia” 2022-23→a/w Photo:Hua Wang

ミナ ペルホネンの歴史は1995年、デザイナーの皆川明が創立したブランド「minä」から始まる。以来、移り変わる流行を追うことなく、日本各地の生地産地と協力しながらオリジナルの生地からプロダクトを作り続けてきた。これまでに生み出された図案は総数1,000点以上、すべて皆川をはじめとするインハウスデザイナーの手作業によってつむぎ出されてきたものだ。ミナ ペルホネンの服をまとうときに感じる豊かさにはミナ ペルホネンと職人たちとが語り合い、大切にものづくりを進めてきた時間が流れている。

会場ではテキスタイルや原画、刺繡や織り、プリント工場の様子などを見ることができる。ファッションから始まったミナ ペルホネンの活動はインテリアや器、食や宿まで幅広いものへと広がってきた。その根底には皆川がブランドを設立当初に残した「せめて100年つづくブランド」という言葉、一着の服をながく愛してほしいという願いがある。ミナ ペルホネンが、そして私たちが次の時代に「つぐ」ものは何なのか、この先も楽しみになる展覧会だ。

“swing camellia” 2022-23→a/w 原画 Photo:sono(mame)
“swing camellia” 2022-23→a/w 原画 Photo:sono(mame)

『つぐ minä perhonen』

“surplus” 2003-04→a/w
“surplus” 2003-04→a/w

世田谷美術館 11月22日(土)~2026年2月1日(日)

皆川明さんは1967年生まれ。2003年にブランドを「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」に改名した。

世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2) TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)10時~18時 月曜(11月24日、2026年1月12日は開館)、11月25日、12月29日~2026年1月3日、1月13日休 観覧料一般1,700円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1153号より

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