さまざまな治療法や対策を知って、更年期を前向きに乗り切ろう
イラストレーション・イオクサツキ 文・嶌 陽子
「女性の体を守ってくれるのが、女性ホルモン・エストロゲン。40代以降、このエストロゲンの分泌量が減少します。そのためもともとゆらぎがちな体がさらに変化しやすくなるのです」と話す医師の松葉悠子さん。女性ホルモンや更年期に関する正しい知識を身につけ、避けられないライフステージを上手に乗り切ろう。
CHECK!
□顔がほてる。
□汗をかきやすい。
□腰や手足が冷えやすい。
□息切れ、動悸がする。
□寝つきが悪い、または眠りが浅い。
□怒りやすく、すぐイライラする。
□くよくよしたり、憂うつになることがある。
□頭痛、めまい、吐き気がよくある。
□疲れやすい。
□肩こり、腰痛、手足の痛みがある。
ホルモン補充療法
世代特有のゆらぎを緩やかにする助けに
ホルモン補充療法(HRT)とは、主にエストロゲンを薬剤で補うことで、更年期の体のゆらぎを緩やかにする治療法。飲み薬や塗り薬、貼り薬の種類があり、婦人科などで処方される。
「皮膚から吸収させる薬のほうが、副作用が少ないため、皮膚がかぶれやすい人以外には塗り薬や貼り薬をおすすめします。また、エストロゲンだけを補った場合、子宮体がんのリスクが上がってしまうため、子宮を摘出した人以外は黄体ホルモンも併せて補充するのが一般的です。私の病院では、乳がんのリスクが少ない天然型の黄体ホルモン製剤(飲み薬)を主に処方しています」
HRTは更年期障害の中でもホットフラッシュや倦怠感、意欲低下に対する効果が高いと話す松葉さん。一方、ホルモン補充療法が適さない人も。
「乳がんや子宮体がんがある人、血栓症の既往がある人は、HRTはできません。また閉経後、5〜10年以上経ってから始めると、認知症のリスクが高まったり血管が硬くなったりする可能性も。あくまでも閉経前後のゆらぎの時期から始めることをおすすめします」
治療を中止する際は医師に相談しながら、ホルモンの量を半量に減らすなどして段階的に行っていくのがよい。また、治療を止めるなら冬がおすすめだという。
「夏は気温が高く、ホットフラッシュがぶり返してしまうこともあるからです」
HRTは原則、保険適用。興味がある人は医師に相談してみよう。
サプリ
女性ホルモンに似た働きを持つ成分を摂取
エストロゲンに似た働きを持つ成分、エクオールをサプリメントでとるという手も。エクオールは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されて作られる。ただし、エクオールを腸内で作れるのは日本人女性の2人に1人。市販の検査キットで自分の体質を知ることもできる。「体質的に自分でエクオールを作れない人は、より更年期の症状が出やすい傾向があるので、サプリメントの活用はおすすめです。特に指の関節痛には、ホルモン補充療法よりもサプリのほうが効果が出やすい場合があります」
安全な乳酸菌で大豆胚芽を発酵させて作ったエクオールがとれるサプリ。エクエル 112粒(28日分)4,320円(大塚製薬 TEL:0120-008018 https://www.otsuka.co.jp/eql/tab/)
漢方
更年期の始まりやHRTに不安がある場合に
「ホルモン補充療法(HRT)に抵抗感がある人、更年期が始まったばかりの人、HRTの効果があまり出ない人などには漢方薬を処方することもあります」
ほてりや不眠、イライラなどに用いる加味逍遙散や、疲れや冷えなどに用いる当帰芍薬散など、症状に応じた漢方薬がある。医師などに相談して選びたい。
生活習慣
運動や推し活が有効。バランスのよい食事も
日々の生活習慣の見直しも、更年期を上手に乗り切るためには大事な対策だ。
「運動はぜひ取り入れたい習慣です。運動習慣のある人は更年期の症状が出にくいというデータも出ています。ふくよかな人はランニングなどの有酸素運動を、痩せ型の人は筋トレがおすすめです」
たんぱく質をしっかりとり、バランスよく食べることも大事。コーヒーやお酒は基本的に控えめにしたいが、リラックスするために少量とるのなら問題ない。
「普段と違うことや新しいことを取り入れてみるのも、気分転換や脳への刺激になります。推し活もおすすめです」
人生後半を前向きに楽しむためにも、自分の心身と上手に付き合っていこう。
病院選びに迷ったら…
信頼できる医師の見つけ方
更年期の不調について相談したいけれど、どこの婦人科に行けばいいか迷うという人もいるだろう。
「『日本女性医学会専門医』の資格を持っている医師は専門性があるという意味で一つの指標にはなりますが、こだわりすぎる必要はありません。自分が信頼できる医師を見つけることが大事ですが、その際のポイントは、治療に関して複数の選択肢を提示してくれるかです。シェアード・デシジョン・メイキング(SDM)、つまり医師と患者がさまざまな治療選択肢の中から最適と思われる選択を相談しながら決められることが重要だと思います」
受診した医師が合わないと思ってもそこで諦めず、いくつか病院を回る覚悟で相性のいい医師を見つけよう。
『クロワッサン』1152号より
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