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歯周病は万病の元──大人の歯を守る最強メンテナンス!

何となく不具合を感じても年のせい? とやり過ごしてしまいがちな歯。けれども、今からきちんと向き合えば、もっと長持ちするのです!

撮影・北尾 渉 イラストレーション・イオクサツキ 文・堀越和幸 構成・堀越和幸

大人の歯を守るための、5つの最新トピックス

髪の手入れを怠らないように、歯にも美意識を向ける
髪の手入れを怠らないように、歯にも美意識を向ける

歯医者さんへは美容院に行くくらいの感覚で通おう

痛くなったら通っていた歯医者さんは、大人になったらちょっと付き合い方を変えると歯はより長持ちをします、と歯科医の照山裕子さんは言う。

「歯をきれいにしている人たちは汚れに敏感で、舌の先でちょっと歯の表面を触っただけでザラッとした感じがわかる、とみんな言います。実はその感覚を持つことが大切です」

どんなに丁寧に磨いている人でも磨けていない部分は必ず残ってしまうのが口の中。それを歯科医に委ねる。

「年齢とともに歯茎は痩せて歯も劣化するので、歯周病や虫歯などの病気と戦う抵抗力はどんどん落ちていきます。ですから、歳を重ねたら“歯医者さんへは美容院に行くくらいの感覚で通うのがいい”というのはそのためです」

ちなみに歯のプロである照山さん自身も、2〜3カ月に一度のペースで、クリニックに通っているそう。

バイオフィルムに守られながら、歯周病菌は歯茎にダメージを与えていく
バイオフィルムに守られながら、歯周病菌は歯茎にダメージを与えていく

口の中の危険な物質、「バイオフィルム」って何?

バイオフィルムとは歯の表面や歯周ポケットに付着するぬめり汚れのこと。

「細菌などの微生物が分泌する粘着性の物質です。シンクの三角コーナーや排水口などにこびりついた汚れをイメージするとわかりやすいと思います」

それが、中に虫歯菌や歯周病菌をくるみ込んで悪さをする。

「バイオフィルムはしぶといので、洗口液などでちょっとうがいをしたくらいでは落ちません。ですので、口が汚れたまま食事をすれば、そのまま体の中に飲み込んでしまうことになります」

照山さんが歯科医を目指して勉強をしていた頃は、バイオフィルムは体の中に入っても胃酸の強力な㏗でやられるだろうというのが定説だった。でも、近年はそれがネバネバに守られて胃を通過することがわかっている。

「落とすためには歯ブラシで擦るしかありません。バイオフィルムをコントロールするためにも、毎日丁寧に歯磨きをしなければならないのです」

歯周病は万病の元。菌が、頭へ、お尻へ、の新事実

照山さんに言わせれば、歯周病とはある意味“血管病”だ。

「歯周病による炎症で放出される物質、サイトカインなどが血流に乗って全身を巡ります」

炎症が起きた歯茎の出血で口の中の細菌が腕の血管に到達するまでにかかった時間はわずか90秒だったとする実験もある。これは毛細血管から細菌自体が流れ込む“菌血症”の状態だ。

「歯周病菌やそれが産生する毒素が全身のあらゆる部分にアタックをかけ、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞、動脈硬化、認知症などの発症や重症化に関わります。大人世代になったら、虫歯よりも歯周病をケアしなければならないといわれるのはそのためです」

そして、近頃は前述したバイオフィルムも大いに問題視されている。近年、大腸がんの病変組織から、とある歯周病菌が検出されたことが話題になった。

「口の中で増殖した歯周病菌が何らかの経路で肛門にまで到達していました。これはとてもセンセーショナルでした。バイオフィルムにくるまれた細菌が腸に届く機序の解明を目指し、日夜研究が進められています」

歯周病菌が小腸や大腸に届けば、日頃どんなに“腸活”に精を出しても腸内環境は台無しになってしまう。

インプラントは良いの? 悪いの? 歯科医はこう考える

欠損してしまった歯は何で補ったらいいのか? すぐに思いつくのは、ブリッジに入れ歯、そしてインプラントだが、インプラントは値段がかなり高い……。

「まず咀嚼の中心は奥歯なので多くの人は、奥歯から失う人が多いです。咀嚼する際には人間と同じ体重がかかる部分なので、できれば天然の歯と同じようにその負荷に耐えられるものを入れたい。それを考えると、今の歯科技術ではインプラントがベストになります」

体に優しいチタンを顎の骨に埋め込むという方法が一般的で、その成功率は98%以上ともいわれているが、

「足りない1〜2%は手術に伴う禁煙が守れなかったり持病の薬などの影響で、骨の定着を悪くするのが原因です」

大学院で入れ歯について研究を行っていた照山さんは入れ歯について、

「基本プラスチックなので強度や厚みがネック。ブリッジは欠損した部分を両側の歯で支えますので、残っている歯に負荷がかかります。欠損したままというのは一番よくありません」

活発なおしゃべりが唾液の分泌を促し、歯を健康に
活発なおしゃべりが唾液の分泌を促し、歯を健康に

口の乾燥があなたをますます老化させる。

年齢とともに、口の中の唾液量は減っていく。

「赤ちゃんはいつもよだれを垂らしていますよね。唾液には若返りホルモンや傷などを修復する成分が含まれています。だから、唾液の量が減ると、口の中の菌が洗い流せなくなり、汚れも溜まりやすくなるんです」

唾液の少ない口は歯周病菌に格好の棲家を提供し、口臭の原因ともなる。

「口が乾きやすいと感じる人は、口呼吸をやめて鼻呼吸をする癖をつけてみてください」

また、よく口を動かすことでも唾液は分泌を促される。

「仲間とおしゃべりするのがいいです。男性よりも女性が減りやすいといわれれるのはホルモンバランスの関係と見られていますが、おしゃべりが好きな女性の場合は減りづらいかもしれません」

  • 照山裕子

    照山裕子 さん (てるやま・ゆうこ)

    歯科医、医学博士

    歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、『歯科医が考案 毒出しうがい』『新しい「歯」のトリセツ』など口腔ケアについての著書も刊行。

『クロワッサン』1152号より

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